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人ではない「ふれる」との絆から見えること

©2024 FURERU PROJECT
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 現実世界では「ふれる」が暴走を始め、町中に糸を放出していたのだ。その糸は秋にしか見えず、糸にふれると、思っていることがすべて漏れてしまう。

 そのため、町中はパニックになっていた。

「どうしてこんなことに…」と思いながらも秋は気づく。「ふれる」の気持ちだ。もう「ふれる」なしでも大丈夫。そんな3人の思いに「ふれる」は孤独を感じた。それに気づいた秋は「これからも一緒にいよう」と手を差し伸べる。

 3人の友情が壊れていく展開のインパクトのあまり、「ふれる」も感情を持った動物ということを観客は忘れるだろう。

 だが、クライマックスでうるうるときらめく「ふれる」の目でようやく気づくのだ。そんな演出がラストの感動を大きくしてくれる。

 思えば、フリスビーをするシーンなどで分かるように、「ふれる」はかわいげのある小動物なのだ。しかし、その能力は偽りの絆を生み出してしまう厄介なもの。そのせいで人からは敬遠されてしまっていた。

 映画冒頭で閉じ込められた「ふれる」を見つけたのが、秋だ。「ふれる」に孤独を救われた秋と同様、「ふれる」も秋によって孤独から救われ、そんな秋のことが好きだったのだろう。

 秋によって暴走が止まり、秋は「ふれる」と共に新たな道へ進んでいく。諒と優太ともお別れとなるがその友情はゆるがないものとなっていた。

 これで本作は終幕となるわけだが、人ではない「ふれる」との絆という予想がつかない結末だった。もちろん、「ふれる」の能力によって見えてくる、言葉で語り合うことの大切さも見どころだ。そして、「ふれる」のように言葉を直接理解できなくても、言葉に込められた思いが心を動かせるというのを見せてくれた作品だといえる。

(文・ガラガラ)

【作品情報】

監督:長井龍雪
脚本:岡田磨里
キャラクターデザイン・総作画監督:田中将賀
出演:永瀬 廉、坂東龍汰、前田拳太郎
©2024 FURERU PROJECT
制作:CloverWorks
製作幹事:アニプレックス・STORY inc.
配給:東宝・アニプレックス
公式サイト

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