迫力は歴代最強なのに…『シン・ゴジラ』を超えられないワケ。映画『ゴジラ−1.0』徹底考察&解説。忖度なしガチレビュー
text by 司馬宙
米アカデミー賞でアジア映画としては初となる視覚効果賞を受賞した『ゴジラ−1.0』。今回は、庵野秀明監督『シン・ゴジラ』との比較から本作の見どころと疑問点を解説。忖度なしのガチレビューをお届けする。(文・司馬宙)<あらすじ キャスト 考察 解説 評価 レビュー>※本レビューは2023年11月の公開時にアップした記事です。
ゴジラの正統後継者・山崎貴による
“令和ゴジラ”シリーズの幕開け
正直に言おう。筆者は、山崎貴監督の作品が苦手だ。
理由は、とにかく「ベタ」でくどいからだ。説明的なセリフの応酬に、大衆のノスタルジーをそのまま具現化したような映像表現…。どちらかというとドライな性格の筆者は少し拒絶反応を示してしまう。
とはいえ、ことVFX技術に関していえば、やはり山崎監督の右に出る者がいないことは重々承知している。何より、あそこまで「ベタ」を徹底できるのは、確固たる映像技術あってこそだろう。だから、そんな山崎がゴジラを撮るとなれば、やはり映画館に足を運ばないわけにはいかないのだ。
…結論から言おう。本作は、怪獣映画としては文句なしの傑作だ。
中盤、ゴジラが銀座を破壊するシーンでは、家や建造物がまるでおもちゃのようにポイポイと投げられていく。また、初代『ゴジラ』(1954)に登場する電車破壊シーンも、電車の乗客の視点からかなりアップで描かれており、まるでテーマパークのアトラクションを体感しているようなスリルと興奮が味わえる。
そして、なんといっても注目は、クライマックスの「ワダツミ作戦」だろう。海で暴れるゴジラの姿を、海空双方の視点から描いたこのシーンは、山崎の過去作である『永遠の0』(2013)の空戦の描写と『アルキメデスの大戦』(2019)を連想させ、山崎のフィルモグラフィにおいても集大成となるシーンに仕上がっている。
また、海面を滑空する零戦目線のオープニングも、本田猪四郎による初代、そして庵野秀明による『シン・ゴジラ』(2016)を踏襲したものになっており、「ゴジラシリーズの正統後継者」たる山崎の確信犯的な心意気が垣間見える。
まさに本作は、”令和ゴジラ”のデビュー戦に相応しい一作だといえるだろう。