人情あふれるキャラクターたちの魅力
そこにさざ波が立つのは、格之進が萬屋源兵衛と囲碁仲間になったことがきっかけだろう。感じ悪く賭け碁を挑んできた源兵衛にあえて負けて見せ、源兵衛のもとで働く弥吉(中川大志)が見舞われた窮地を機転と武士ならではの迫力で助けた格之進に、源兵衛は心底惚れ込む。
そして、元々がめつい商売人として周囲から疎まれていたはずの源兵衛も、格之進と親交を温めることで次第に改心していく。
張り詰めた物語にあって、萬屋で働く人々はどこか抜けがあっていい。格之進と出会って人が変わっていく國村隼演じる源兵衛は愛らしく、そんな源兵衛を恩人として敬う弥吉を中川大志が愛嬌たっぷりに演じている。特に前半、中川は緩急の“緩”のパートを引き受けており、それが作品に奥行を与えている印象だ。
そんなキャラクターに囲まれても格之進は多くは語らず終始穏やかだが、自分の中に誰にも折れない鋭い芯があることを感じさせる。それはある時代に確かにあった日本文化の結晶を思わせる。
草彅は佇まいだけで雄弁にそれを表現する。その姿は美しく、どこか危なっかしい。