「清廉潔白であること」の是非
格之進の復讐の相手である柴田兵庫(齋藤工)との囲碁のシーンは圧巻であった。緊張で息が詰まる。そこから突如はじまる殺陣。それぞれの“正義”にどこまでも潔く、自身の命を守ることよりも相手の命を奪うことに重きを置いた斬り合いに恐怖を感じた。
『碁盤斬り』は復讐を描いた物語ではあるが、大きなテーマとして「清廉潔白であること」の是非を問いかけてくる物語でもある。
先述した通り、格之進は実直に、自分にも他人にも「清廉潔白であること」を課して生きてきた男だ。だが、実際には本編にも出てくる「水清ければ魚棲まず」という言葉の通り、格之進の目指した清廉潔白な世界から零れてしまった人々がいた。彼らにもそれぞれの生活があったにもかかわらず。
そのことに自覚的であったかは定かではないが、少なくとも格之進は兵庫との一騎打ちを通して、自身の心にこれまでの行いが正しかったかどうかを強く問いかけたはずだ。嫌疑をかけられ藩を追われたこと、お絹が女郎屋へ行かねばならなかったことなどの度重なる不運は、知らず知らずのうちに格之進が背負ってしまった業の表れでもあったのかもしれない。
兵庫との討ち合いを経て、最後の行動へと帰結していく。武士として生きる男の不器用さが、切なく愛おしく胸に迫る。
(文・あまのさき)
【作品概要】
映画『碁盤斬り』
全国にて絶賛公開中!
出演:草彅剛
清原果耶 中川大志 奥野瑛太 音尾琢真 / 市村正親
斎藤工 小泉今日子 / 國村隼
監督:白石和彌
脚本:加藤正人
音楽:阿部海太郎
製作:木下グループ CULEN
企画:フラミンゴ
制作プロダクション:ドラゴンフライエンタテインメント
配給:キノフィルムズ
小説 「碁盤斬り 柳田格之進異聞」加藤正人 著(文春文庫)
©2024「碁盤斬り」製作委員会
配給:キノフィルムズ
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