だらしない体型から「女子プロレスラー」の肉体へ
そして、ゆりやんの最も恐るべき点は「体つき」だ。
前半のだらしない、言葉を選ばずに言えばただ太っている体つきだったのが、後半では誰がどう見ても立派な「女子プロレスラーの肉体」に変化していたのだ。プロレスの技だけでなく、セリフの発声ひとつを取っても、パワー、スピード、キレ、全てがダンプ松本のそれだったのだ。
この変貌っぷりは、先のNetflix ドラマ『サンクチュアリ -聖域-』(2023)で主人公・猿桜を演じた一ノ瀬ワタルが、街のゴロツキ体型から鍛え上げられた力士の肉体に変化していくさまを思い出した。
数ヶ月で全てを撮り終えなければいけない地上波の連続ドラマでは決して表現することができない「鍛錬」の過程を、この『極悪女王』でも存分に味わうことができたのだ。もちろん、それはゆりやんレトリィバァだけでなく、女子プロレスラー役を演じた俳優全員にそう感じた。全員が命を削る覚悟で、役に、作品に向き合ったからこそ、ここまで熱のある作品になったのではないだろうか。
その過程を経て訪れるラスト、ダンプ松本の引退試合は間違いなく日本ドラマの歴史に残る最高のシーンとなった。
「ダンプ松本はもう終わりだ。松本香で戦う」
「うちらが強うなった姿、見せてやろうで」
と、肩を組んでリングを睨みつける2人の姿に全身が沸騰するほどの興奮と感動を覚えるだろう。全日本女子プロレスの公式YouTubeチャンネルに当時の試合動画がアップされているので、どれだけの再現度なのかぜひ見ていただきたい。
そしてその後に、ゆりやんの“吉本闇営業騒動”のインタビュー動画を検索し、そのギャップに震えていただきたい。
最後に、こんな最高のドラマの主役を演じたゆりやんレトリィバァには、これから心から調子のっちゃってほしい。
(文・かんそう)
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