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創意工夫にあふれたモンタージュー映像の魅力

モニターを見つめる北野武監督
モニターを見つめる北野武監督Getty Images

本作には、これまでの北野の作品にまして、随所にオリジナリティあふれる映像表現が散りばめられている。

とりわけ注目なのは、シーンの随所に挟まれる北野自身の絵だろう。作中では、自殺を図った堀部が、西から送られた画材を使って描いた絵がメインだが、よくよく見てみると、病院やヤクザの事務所にも飾られている。「花」や「天使」といった柔らかいモチーフを描いたこれらの絵は、本作の「贖罪」や「救済」といったモチーフと呼応し、更なる奥行きをもたらしている。

また、本作では、起こっている事象を第三者のリアクションと結果のカットから間接的に描写するという手法も随所に見られる。例えば、西に金を貸したヤクザの事務所のシーンでは、白竜演じる東条が兄貴分にきつい冗談を言ったチンピラを壺で撲殺する場面があるが、肝心の撲殺の瞬間は映されずに壺が割れる効果音や組員のリアクション、そして地面に転がっている死体のカットから間接的に描かれる。

この手法は銀行強盗のシーンでもこの手法は印象的に使われている。このシーンでは、西と、彼を相手する行員の他に、異変に気づいた客のリアクションが収められている。客のリアクションをあえてモンタージュすることで、本作の強盗の異様さが際立たせているのだ。

また、従来の北野作品とは異なり、クレーン撮影が効果的に用いられているのも本作の特徴だろう。例えば、ヤクザとの車内の銃撃戦のシーンでは、白い車の屋根を真上から捉えた後、1人後部座席のドアを開け雪原を歩く西の姿を後ろから映す。よたよたと歩く西のシルエットと、雪の上に映った彼の影のコントラストがなんとも美しいシーンだ。

そして、極め付けはラストシーンだろう。海辺でじっと肩を寄せ合う西と美幸をロングショットで抑えたのち、カメラがゆっくりと上昇していく。そしてひとしきり上昇し終えると、今度はゆっくりとパンしていき、海の映像と共に二発の銃声が響く。2人の魂の浄化を表しているかのような見事なラストだ。

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