ホーム » 投稿 » 日本映画 » 劇場公開作品 » 生の試合かと錯覚…横浜流星の”命懸け”の演技がスゴい。映画『春に散る』考察&レビュー。ボクシング映画の新たな傑作を解説 » Page 3

なにより「今この瞬間を生き切る」

(C)2023 映画『春に散る』製作委員会
C2023 映画春に散る製作委員会

当初、広岡はかつて自らが所属した真拳ジムに黒木を紹介するが、東洋太平洋王者でジムのホープである大塚俊(坂東龍汰)とのスパーリングで、黒木のファイトスタイルを見た令子から「ウチの方針と合わない」と突き放され、結果、子ども向けのボクシング教室を主だった活動内容とする「山の子ジム」に所属することになる。

やがて、黒木を王者にするという広岡の情熱は、夢をあきらめた経験をした周囲の人々をも巻き込んでいく。広岡の期待に応えるように快進撃を続け、大塚を倒し東洋太平洋王座を獲得。そしてついに、中西利男(窪田正孝)が持つ世界王座のチャンスを得る。

しかし、黒木にはボクサーにとっては致命的な網膜剝離の一歩手前の「網膜裂孔」が襲い、黒木はレーザーで裂孔を一時的に塞ぐ手術を受け、世界戦に臨む決心をする。一方、広岡の心臓も限界に達し、“その時”が刻一刻と迫る中、ゴングが鳴る…。

一見、ボクシング映画の王道のようなストーリーだが、陳腐さを全く感じさせない演出や心理描写は、監督の瀬々敬久をはじめとする製作陣、そして経験豊富な豪華俳優陣の腕によるところも大きい。

1 2 3 4 5 6
error: Content is protected !!