キャラクターの人柄を表現するピアノの音色が素晴らしい
湊人単独のピアノ演奏もまた胸を打たれた。演奏する姿勢や表情。そして猛練習したというピアノの音色が余韻を残す。様々な楽曲を弾くが、とりわけ印象的なのが繊細な音色が連なるノクターンのシーン。鍵盤が沈んで音を鳴らすのだが、京本は撫でるようなタッチで鍵盤の一つひとつに指を置き、優しく沈ませて音を奏でる。
その姿からは、雪乃に対する気持ちをはじめ、湊人の心情や、繊細で誠実な人柄が伝わる。また、丸みを帯びたメロディーは、そうした彼のキャラクターを見事に表現していた。
“着席してピアノを弾くという動作上、ダイナミックな動きのあるシーンではないが、“静かなる熱気”というようなインパクトを残す場面だった。こんな風に、本作では湊人を演じる京本が、セリフや表情などの動きに加えて、ピアノ演奏においてもたっぷりと気持ちを乗せた芝居で魅了する。
湊の手、そして彼が奏でるピアノの旋律からは様々な感情が伝わってくるのだ。雪乃が演奏するピアノの旋律に心惹かれた湊人のように、観客もまた湊人のピアノの音色に心を動かされるだろう。
古川琴音らしいミステリアスな雰囲気が、作品の持つ世界観とマッチしており、これぞハマり役。ミュージカルで鍛え上げてきた京本ならではの芝居と、古川の個性的な芝居が音楽を通して交わる。まさにピアノの“連弾”のような作品だ。