そして、誰もいなくなった
Netflixシリーズ「地面師たち」Netflixにて世界独占配信中 ©新庄耕/集英社
さらに中国マフィアは金を盗んだ家に家主が帰ってこないかどうかはずっと見張っているし、彼が金を下ろした後に逃げないかどうかも見張っていたという。
見張られる中、銀行が閉まる15時の寸前に銀行に入り手続きをした。
「普段、汚い服で銀行入るとジロジロ見られるけど、背広着てると全然違うな。なんやったらペコペコ頭下げられたし。なんの滞りもなく400万円下ろせたで。盗んだ金返したプラス20万円もらったわ」
と、薄い札束を自慢気に見せてきた。
そんなに簡単になりすましができるということに驚いた。
やっぱり人間には根底に、
「自分が詐欺にハマることはないだろう」
と思うようだ。
『地面師たち』を見た人の中には、
「写真、全然違うじゃん!! 気づくって!!」
とか
「ピエール瀧の関西弁聞いただけで詐欺だって気づくよ普通~」
と、思うかもしれないが、これが現実だとスルーしてしまうのだ。
積水ハウス地面師詐欺事件でも、犯人サイドがなりすましの誕生日を間違えたり、パスポートの表記が間違っていたりしたのに、それでもあっさりと騙されたという。
意外と人は騙せるのだ。
ただ、それでも詐欺師にはなろうと思わないほうが良い。
『地面師たち』も登場人物のほとんどが、最終的に何もかもを失っているが、これは現実でも同じだった。
金を下ろした彼は、ある日、僕の留守番電話に
「ヤバい、ヤバい。結構ヤバいことになってるわ。またかけ直すわ」
と吹き込んだきり連絡がなくなった。
彼を雇っていたボスも消えた。
ふたりともその日を境にいなくなった。
逮捕されたのかと思ったが何年経っても、二度と電話がかかってくることはなった。
おそらくは……。
詐欺のスリルとサスペンスはドラマを見て味わうだけにしておいたほうが良いようだ。