その道のプロが見た『地面師たち』が醸す“本物の凄み”とは?(1)「現実にこんな奴いねえだろ」のツッコミは妥当か
text by 村田らむ
2024年7月25日に全世界配信され、大ヒットを博している『地面師たち』。ハリソン山中率いる地面師集団の手口に、ハラハラした視聴者も多いのではないだろうか。そこで今回は、新興宗教やドヤ街などへの潜入取材を行ってきたルポライターの村田らむ氏にレビューを依頼。ご自身の経験と本作のリアリティについて語っていただいた。
ハリソン山中ににじみ出るリアルな「得体の知れなさ」
Netflixシリーズ「地面師たち」Netflixにて世界独占配信中 ©新庄耕/集英社
『地面師たち』は2017年に実際に起きた積水ハウスが55億5千万円だまし取られた地面師詐欺事件を下敷きにして制作された配信連続ドラマだ。
地面師のリーダーのハリソン山中を司令塔に、自身も地面師詐欺の被害に遭った経験のある主人公、元司法書士、キャスティング手配師、土地の情報屋、身分証などを偽造するニンベン師などの地面師たちが大企業を騙して大金をせしめるという物語。
一癖も二癖もあるキャラクターの中でも、特に豊川悦司演じるハリソンはかなりアクの強いキャラになっている。
「俺の考えた最強の地面師!!!」
という感じかもしれない。動物のガンハンティングが趣味で、誰にでも敬語で丁寧だが、非常にサディストで楽しみながら残酷な殺人を繰り返す。兄さん怖いよ……。
「現実には、こんな奴いねえだろ!!」
と思うかもしれないが、意外とそうでもなかった。悪い業界の人は「得体のしれない威圧感」を出してくる人は多かった。
今作でも出てくるが“シャブ中のクズ”や“隙を見せたら殺そうとしてくる馬鹿”を押さえつけないといけないわけだから、威圧感は必須だ。むしろ、真面目でやや正義の気持ちが残っている主人公の方が珍しい。
「なんでこんな悪いことしてんの?」
と、新人刑事・倉持役の池田エライザじゃなくても思う。
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