その道のプロが見た『地面師たち』が醸す“本物の凄み”とは?(2)懐かしい感覚になった…最もリアルだったシーンは?
2024年7月25日に全世界配信され、大ヒットを博している『地面師たち』。ハリソン山中率いる地面師集団の手口に、ハラハラした視聴者も多いのではないだろうか。そこで今回は、新興宗教やドヤ街などへの潜入取材を行ってきたルポライターの村田らむ氏にレビューを依頼。ご自身の経験と本作のリアリティについて語っていただいた。
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【著者プロフィール:村田らむ】
ホームレス、青木ヶ原樹海、ゴミ屋敷、スラム街などアンダーグラウンドな現場に嬉々として潜入・体験取材するルポライター。近著に『樹海怪談』『にっぽんダークサイド見聞録』がある。YouTubeチャンネル『リアル現場主義』でもアンダーグラウンドな情報を発信し続けている。
どんどんエスカレートしていく詐欺の手口
第一話にギュッと地面師の具体的な仕事や魅力が詰められている。かなり展開が早く、金をせしめる。
ただ、騙す相手が、多少調子に乗ってるとはいえ善良な市民なので、騙し終えた後に、「スッキリした!!」という気持ちにはならない。それでもかなり犯罪の手口がリアルに描かれているので見ていて楽しかった。漫画の『ナニワ金融道』を読んでいる感覚に近い。
第二話からは、それぞれの仕事をより具体的に見せていく。第一話と比べて詐欺の規模は約10倍(まあ正直一庶民からしたら、10億でも100億でも変わらないのだが)。仕込みもより手の込んだものになっていく。同時に、警察が動き始めたり、身内のゴタゴタが発生して、徐々に歯車が狂っていく。
それでも、無理やり計画を押し通すので、かなりヒリヒリとした話が多くなる。Netflixの作品だけあって、エグめのシーンも多い。
作品の中で一番チリチリと熱いシーンは、不動産業者との面会シーンだ。社運を賭けた、億単位の金がかかっているのだから、妥協なく真剣に挑んでくる。
「一手間違えたらバレるかもしれない……」
という張り詰めた緊張感と、そこはかとない羞恥心を感じた。
なんとなく懐かしい感覚だった。
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