シリーズ最高傑作である理由④魂の芝居で魅せた“王騎”大沢たかお
新木優子演じる摎が、大沢たかお扮する王騎、草刈正雄扮する昭王、それぞれと相対するシーンも見応えがあった。
秦の第28代君主であり、嬴政の曽祖父である昭王。かつて戦神と崇められ、王騎が仕えた伝説の秦国王と、実はその娘であった秦国・六将の1人である摎。
この2人が再会し、瞬時にお互いが親子であることを悟ったシーンでは、両者の表情、発する言葉から感じられる息遣いによって、何とも言えぬ緊迫感を醸し出していた。
一方、王騎と摎の対面シーンはどうだっただろうか。
摎は、王騎に10代のころ恋心を抱いた際、首の傷の手当てを受ける。そして、彼とある約束を交わす。
今で言うイケオジである王騎に、歳の差など関係ないと想いを寄せていた摎。
2人のやりとりはとても穏やかであり、ここだけ見れば、ラブストーリーとして観ることもできる。シリーズ全体を通して、王騎の普段とは異なる側面が見られる貴重な場面だと言えるだろう。
しかし、残酷にも、両者の絆は龐煖の手によって永遠に断たれることになる。
さて、本作最大の焦点である王騎と龐煖の関係性を見ていこう。2人はラストバトルで対峙する。
因縁のきっかけは、先の戦いで王騎との約束のため戦に邁進する摎が、龐煖に殺されてしまったことにある。
この対決における王騎の、これまでに見せたことのない憤怒ぶりが凄まじかった。
演じる大沢たかおの表情からは、王騎が摎のことをどれほど大切にしていたのか、痛いほど伝わってくる。両者の対決をじっと見守る信をはじめとした「飛信隊」の面々の表情もまた、素晴らしかった。