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戦国武将同士の恋愛関係を描いたワケは…? 映画『首』徹底考察&評価。北野武最新作は面白い? 忖度なしガチレビュー

text by 山田剛志

ビートたけし、西島秀俊、加瀬亮、浅野忠信ほか、超豪華キャストでおくる、前代未聞の戦国エンターテインメント『首』が、11月23日(木)の公開に先駆けて、第36回東京国際映画祭のガラ・セレクション部門で上映される。今回は、本作の最速レビューをお届けする。(文・山田剛志)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】

まるで「戦国版アウトレイジ」
新境地を切り拓いている部分も

©2023 KADOKAWA ©T.N GON Co.,Ltd.
©2023 KADOKAWA ©TN GON CoLtd

怒れる殿様・織田信長(加瀬亮)は、年長の家来に遠慮なく飛び蹴りをかまし、明智光秀(西島秀俊)は信長への禁断の恋心を胸に宿し、北野武が自ら演じる豊臣秀吉はブレーンの黒田官兵衛(浅野忠信)、実弟であり片腕の秀長(大森南朋)から介護同然の扱いを受ける…。

初お披露目となった今年のカンヌ国際映画祭で、賛否両論の渦を巻き起こした本作を、残酷さを通り越して笑いへと突き抜ける暴力描写、権謀術数が渦巻く男性社会における覇権闘争のダイナミックな描き込みにおいて、「戦国版アウトレイジ」と呼ぶこともできるだろう。

現に、加瀬亮、大森南朋、服部半蔵役の桐谷健太、千利休役の岸部一徳など、『アウトレイジ』シリーズに登板した俳優たちも多数登場。とりわけ加瀬は、同シリーズでみせた演技のトーン(血管が切れてしまわないか心配になるほどの暴れぶり!)、役回り(ベテラン俳優に対する容赦のない追い打ち)を踏襲しつつ、権力の保持よりも常なる動乱を求めるマッドな信長像をギャグすれすれのハイテンション芝居で体現している。

一方、本作は『アウトレイジ』シリーズ、ひいてはこれまでの北野作品に潜在していた欲望がダイレクトに描かれているという点で、新境地を切り開いてもいる。その欲望とは男性同士の恋愛感情である。

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