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暴力、お笑い、ホモソーシャル…
北野のフィルモグラフィの集大成

©2023 KADOKAWA ©T.N GON Co.,Ltd.
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さて、前置きが長くなった。『首』の話だ。結論から言えば、北野が30年間あたためてきたという本作は、ある意味北野のフィルモグラフィの集大成でもある。

まずタイトルにもある「首」について。本作は、人権意識が希薄な戦国時代が舞台なだけあってあっけなく人が死んでいく。特に、武将たちの首がポンポン飛んでいくシーンは、実に即物的で生々しい。こういった描写は、初期北野映画のドライな殺戮シーンを連想させる。

続いて、全体に緩く散りばめられた「お笑い」について。これは、言わずもがな芸人・ビートたけしの血を感じさせるものだ。なお、本作では、豊臣秀吉(ビートたけし)豊臣秀長(大森南朋)黒田官兵衛(浅野忠信)の3人がコメディリリーフを務めている。

そして、武将たちの「男色」について。これは、『BROTHER』(2001)をはじめとするヤクザの親分子分などのホモソーシャルな関係性のメタファーと言えるだろう(現に、本作にはメインとなる女性がほとんど登場しない)。また、北野がかつて出演した大島渚監督作品『戦場のメリークリスマス』(1983)『御法度』(1999)も連想させる。

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