今、懸念される「2024年問題」
本作では、ECサイトで注文された商品がユーザーのもとに届くまでの流れが非常にわかりやすく説明されている。例えば、デリファスが注文を受けた商品はエレナのいる関東センター(自社倉庫)から、八木竜平(阿部サダヲ)がいる運送会社・羊急便の関東局へ。そこからさらに各地の配送センターに送られ、佐野昭(火野正平)・亘(宇野祥平)親子をはじめとする委託ドライバーがそこで受け取った荷物を注文者のもとへ届ける。
この最後の区間を「ラストマイル」といい、ここでは時間外労働の上限規制がドライバーにも適用される一方で、慢性的な人手不足により荷物がスムーズに届かなくなる「2024年問題」が今、懸念視されている。
では、なぜ運送業界に人手が足らないかといえば、その理由の一つが賃金の安さだ。デリファスは送料無料を実現するために、運送会社である羊急便を叩いて運送単価を抑えていた。結果、委託ドライバーたちに払われる賃金も安くなる。それは表面的にはお客様のためとされているが、結局は大元にある会社の利益のためだ。
「Customer centric(全てはお客様のために)」
そんなマジックワードで末端の人間が搾取される資本主義を推し進めた結果、起きた悲劇がこの映画では描かれている。
『アンナチュラル』『MIU404』目当ての人には物足りない?