藤本タツキの作画を忠実に再現した映像表現
本作は、自分の漫画に自信がある藤野(河合優実)と、人と関わることが苦手な不登校の同級生・京本(吉田美月喜)が漫画を通して出会い、二人三脚で成長していく青春物語だ。
藤野と京本の声優を担当した河合優実と吉田美月喜は、オーディションを経て抜擢された。どちらも声優初挑戦とは思えぬ好演ぶりで、観客を物語に引き込むことに成功している。
特に、吉田が演じる京本は、少ないセリフの中でも強めの秋田弁で興奮すると早口になるのが特徴で、方言を聴き続けても違和感を感じなかったことから、役と徹底的に向き合う、並々ならぬ努力の跡が伺えた。
そして、本作の特徴は、なんと言ってもその映像表現方法にある。
本編や予告編を視聴した方は共感していただけると思うが、映画では藤本タツキの作画が限りなく忠実に再現されている。正に、「絵が生きている」と言うべきだ。これを可能にしたのが、「原動画」という概念であると、押山監督はインタビューで明らかにしている。
アニメの原画は、まず初めに動きのキーになるポイントだけを描き、それを動画スタッフが補完して描き直すことによって、完成させるのが一般的だ。
一方、本作では、原画の表現をそのまま活かすフローで制作されたため、原画から発せられるキャラクターの感情が、ダイレクトに伝わってくるのだ。その臨場感は、本作の題材でもある「漫画」に近いと言ったらいいだろうか。一コマ一コマの質感が絶え間なく動く画からしっかりと感じとれるようになっているのだ。