エンドロールまで見逃せない…和歌山毒物カレー事件を主題にした映画『マミー』が描く「映像の怖さ」とは? 考察&評価レビュー
text by 青葉薫
あの「和歌山毒物カレー事件」を多角的に検証した映画『マミー』が公開中だ。林眞須美被告は、2009年に最高裁で死刑が確定。今も獄中から無実を訴え続けている。今回は、映像というメディアの「功罪」について考えさせてくれる本作のレビューをお届けする。(文・青葉薫)【あらすじ 解説 考察 評価】
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【著者プロフィール:青葉薫】
横須賀市秋谷在住のライター。全国の農家を取材した書籍「畑のうた 種蒔く旅人」が松竹系で『種まく旅人』としてシリーズ映画化。別名義で放送作家・脚本家・ラジオパーソナリティーとしても活動。執筆分野はエンタメ全般の他、農業・水産業、ローカル、子育て、環境問題など。地元自治体で児童福祉審議委員、都市計画審議委員、環境審議委員なども歴任している。
切り取り方ひとつで見え方が変わる映像というメディアの怖さ
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映像はわたしたちの心を動かす。情動を喚起させ、感情を揺り動かす。だが、映像は時にわたしたちの目を欺く。カメラ・パースペクティブ・バイアス(※どのような角度で撮影するかによって生じる被写体に対する偏見)。
映像は切り取り方ひとつで被写体を善人にも悪人にも見せることができる。文章もまた然り…本稿で紹介する作品は2009年に最高裁で出された死刑判決を扱っている。被告は再審を請求している。執筆時において刑はまだ執行されていない。
映画が世論を動かすのかどうかはわからない。だが、レビューとして書かれた文章が未見の読者に事件に関する先入観を与えるべきではない。本編を観終えた後、強く感じた。事件の表層をなぞっただけの自分ごときが無責任に「冤罪」なんて言葉を口にできるような、簡単な話ではないと。
作品そのものの表現に関することはともかく、事件に関しては主観的かつ過剰な表現を極力排除し、中立公正な視点で書いたつもりだ。が、くれぐれも誘導されないよう警戒して読んで頂ければ幸いである。