簡単には言語化できない119分
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エドワード・ゴーリーの絵本のような読後感だった。彼の代表作である「不幸な子供」や「おぞましい二人」のような。涙がとめどなく溢れてくる。自分がどうして泣いているのか。誰に感情移入して泣いているのか、それすらも簡単には言語化できない。そんな119分だった。
26年前、日本中を震撼させた和歌山毒物カレー事件を多角的に検証したドキュメンタリー映画「マミー」。
1998年7月、夏祭りで提供されたカレーに何者かがヒ素を混入。67人がヒ素中毒を発症。小学生を含む4人が死亡する事件が起きた。凄惨な事件にマスコミの報道は過熱を極めた。逮捕されたのは近所に住む林眞須美。4人の子供を育てていた母親である。彼女は容疑を否認しており、2009年に最高裁で死刑判決が確定した後も獄中で無実を訴え続けている。
もしも無実だったとしたら…と何度も想像させられていた。我が子と引き裂かれた母親の深い絶望と悲しみ。無実の訴えが認められない失望。毎朝、刑務官の足音が響くたび死刑の執行に怯え続ける恐怖。道徳で学んだイソップの寓話「嘘をついた子供」のラストシーンが思い起こされた。