自ら命を絶った眞須美さんの長女が遺したもの
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だが、終わったことにできないのは無罪を訴える眞須美さん本人やその家族だけではない。本作にも登場する「カレー事件被害者の会」副会長の杉谷安夫さんを始めとする被害者家族もまた、深い傷や忘れられない思いを抱えたまま生きている。
事件を過去にできない人たちへの想像力と行動力。「刑が執行されてしまったら取り返しがつかない」。被告が無罪を主張している中、一点の曇りもない真実を追い求めようと足掻く二村監督の姿は、多くの真実が黒塗りで踏み躙られる現代において「希望」にも感じられた…が、映画終盤のミッドポイントでわたしは冷や水を浴び、冷静さを取り戻した。
それは映画の冒頭で浩次さん(仮名)の部屋に置かれていた絵本やぬいぐるみの数々が2021年、4歳の長女とともに海に飛び込んで自ら命を絶った姉…眞須美さんの長女の遺品だったことが明かされるシーンだ。
身勝手な思い込みだったとはいえ、その絵本は眞須美さんが子供に読み聞かせていたものではないという事実に何か突き放されたような思いがあった。