映像に感情を左右されて真実を見誤ってはいけない
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「私は何かとんでもない思い違いをしているのではないだろうか」
二村監督の言葉が甦る。続いて湧き上がってきたのは、それこそが映像作品という特性を生かして本作が訴えたいことの本質ではないかという思いだった。
映像に感情を左右されて真実を見誤ってはいけない。そのメッセージは翻って本作に感情を左右されて真実を見誤ってはいけないという監督の警告にも感じられた。
そう、事件の真実はあくまで、個々の思い込みや主観ではなく、客観的事実によってのみ決められるものでなければならないのだ、と。
その監督自身が取材の過程で〈ある過ち〉を犯したところで映画は終わりを迎える。それが雄弁に物語るのは「人は誰でも間違いを犯す」ということ。人は間違うから犯罪に手を染めることもあるし、間違うから冤罪が生まれることもある。わたしが映像に翻弄され、思い違いをしそうになっていたのと同じように。
「マミー」
ラストを締め括る眞須美さんの手紙に滲む母親としての凄み。劇場の暗闇で呆然とエンドロールを見つめ、観客の多くが反芻するだろう。
「私は何かとんでもない思い違いをしているのではないだろうか」と。
(文・青葉薫)
【作品情報】
監督:二村真弘
プロデューサー:石川朋子、植山英美(ARTicle Films)
撮影:髙野大樹、佐藤洋祐 オンライン編集:池田聡 整音:富永憲一
音響効果:増子彰 音楽:関島種彦、工藤遥
製作:digTV 配給:東風
2024年/119分/DCP/日本/ドキュメンタリー
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