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声優交代の是非は? 映画『劇場版モノノ怪 唐傘』考察&評価レビュー。キャラクターを体現した「手の表情」を徹底解説

コミカライズやノベライズなど、新たなファンを獲得し続けている『モノノ怪』シリーズ。アニメ放送から17年の時を経てついに映画化となった『劇場版モノノ怪 唐傘』が現在公開中だ。今回は、豪華絢爛な大奥を舞台とした本作の、美麗な世界観を徹底的に解説する。(文・詩舞澤沙衣)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】

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【著者プロフィール:詩舞澤沙衣】

大学在学中、文芸サークル 新月お茶の会に所属。現在は、SRの会と限界研所属。本格ミステリ大賞候補作、『現代ミステリとは何か』(限界研、南雲堂)で、「作家だって一生推してろ斜線堂有紀論」執筆。現在ライターとして活動中。

ファンの間で動揺が走った映画化

映画『劇場版モノノ怪 唐傘』
©ツインエンジン

 本作は、「アニメ『モノノ怪』15周年プロジェクト」として発表された作品だ。クラウドファンディングが立ち上がり、X(旧Twitter)で情報解禁された際にはファンの間では動揺が走った。エンドロールを実際に劇場で見れば、クレジットなどで多くのファンを獲得したアニメシリーズであることはよくお分かりになるだろう。

 アニメ『モノノ怪』は、フジテレビの深夜アニメ枠「ノイタミナ」で始まったシリーズだ。妖怪を取り扱ったアニメのオムニバス企画『怪~ayakashi~』(2006)の1編「化猫」から派生し、2007年には『モノノ怪』が制作される。東映アニメーションから演出の仕事をはじめ、タツノコプロで力を発揮してきた中村健治が監督として出世するきっかけとなった、記念的作品である。

「ノイタミナ」では、オリジナルアニメを中心に、作家性の強い作品が多く制作されてきた。中村監督のほかには、近年では映画『犬王』(2021)などで知られる湯浅政明が『四畳半神話大系』(2010)を、近年では映画『ひるね姫〜知らないワタシの物語〜』(2017)で知られる神山健治が『東のエデン』(2009)を制作している。ノイタミナは演出家・監督の登竜門的存在でもあるのだ。

 ノイタミナでは、他にも、『PSYCHO-PASS』(2012~)など、後のアニメに影響を与えた作品を数多く世に出している。アニメ枠のブランディングに熱心で、ノイタミナショップなど独自の展開を見せている。

 こう長たらしく書くと、既存のファン向けの映画のように思われるかもしれないが、そんなことはない。新規視聴者として『劇場版モノノ怪 唐傘』から、『モノノ怪』シリーズに触れるのもまた、鮮烈な体験を味わうことができるだろう。

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