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1番の見どころ「紳儀」

映画『劇場版モノノ怪 唐傘』
©ツインエンジン

 視覚的効果といえば、本作は「手」に関する描写が卓越している。

「薬売り」の「手」は過去作でも丁寧に描かれるが、今作の「手」は今まで以上に美しい。アサとカメがぎゅっと手を握りあうシーンなど、登場人物それぞれの「手」を見ると、それぞれのキャラクター性が見事に体現されている。

 また、「手」によって表現される文字にも注目したい。大奥の華やかさ、実務的な地味さ、その両面が「手の表情」にあらわれている。皺や骨付き、肌の様子で、その人の人生が見えるようだ。

「怪異」を退治する「薬売り」の変身バンクとでも呼ぶほかない演出は、シリーズでも1番の見ごたえだ。「神儀」という名のその姿へ変身するシーンは、何度も見たくなる。

「手」に加えて、本作を読み解く上で重要な役割を果たすのは「水」である。水面の表現、「におい」が立ち上るような表現。年齢にもよるが、人間の体のうちで水分は50~60パーセント程を占めるだけのことはある。「水」にまつわる神事が毎朝おこなわれる様は、「大奥」の神秘性を拡張していく。

 余談だが、公式X(旧Twitter)では、映画を1回見ただけでは分かりにくい「大奥」や登場人物についての紹介ツイートが細かく投稿されている。

 どうしても、事前に登場人物などをしっかり把握したい、という方は事前に目を通すとよいかもしれない。もちろん、映画鑑賞後に見返すのも楽しい。また、公式webサイトでは、「アニメ『モノノ怪』15周年プロジェクト」の一環として、多くのイラストレーターによる書下ろしイラストも見ることが出来る。ほかにも、舞台化やノベライズなど、メディアミックスでも新しい「薬売り」を見ることができる。

 15年ぶりの「薬売り」は、今でも変わらず、怪異と対面している。その当たり前な姿が、なんとも頼もしくて、より一層「モノノ怪」という世界が好きになった。

(文・詩舞澤沙衣)

【作品情報】

キャスト
薬売り:神谷浩史 アサ:黒沢ともよ カメ:悠木碧 北川:花澤香菜 歌山:小山茉美 大友ボタン:戸松遥 時田フキ:日笠陽子
淡島:甲斐田裕子 麦谷:ゆかな 三郎丸:梶裕貴 平基:福山潤 坂下:細見大輔 天子:入野自由 溝呂木北斗:津田健次郎
スタッフ
監督:中村健治 /キャラクターデザイン:永田狐子 /アニメーションキャラデザイン・総作画監督:高橋裕一 /美術設定:上遠野洋一
/美術監督:倉本章 斎藤陽子 /美術監修:倉橋隆 /色彩設計:辻田邦夫 /ビジュアルディレクター:泉津井陽一 /3D 監督:白井賢一
/編集:西山茂 /音響監督:長崎行男 /音楽:岩崎琢 /プロデューサー:佐藤公章 須藤雄樹 /企画プロデュース:山本幸治
/配給:ツインエンジン ギグリーボックス 制作:ツインエンジン EOTA
主題歌 :「Love Sick」アイナ・ジ・エンド(avex trax)
公式HP

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