「美しさの裏に刻まれる戦争の悲劇 」中川真知子(映画×テクノロジーライター)|映画『木の上の軍隊』マルチレビュー

公開中の話題作を4人の評者が“忖度なし”で採点する新企画「映画チャンネル」マルチレビュー。今回は、堤真一×山田裕貴共演の映画『木の上の軍隊』を徹底レビュー。果たしてその評価は? 点数とあわせて、本作の魅力と課題を多角的に掘り下げる。※評価は5点満点とする。(文・編集部)

——————————

美しさの裏に刻まれる戦争の悲劇

中川真知子(映画×テクノロジーライター)

【採点評価】3点

 エンタメとしての盛り上がりは少ないかもしれない。戦時中の悲惨さを表現するには画面が綺麗すぎるだろう。だが、同作は精一杯、大和魂を描こうとしている。この時代を生きる私たちに、私たちの生活が戦士たちの命の上に成り立っていることを気づかせようとしてくる。

 堤真一と山田裕貴演じる兵士の愛国心と生に対する執着、そして葛藤する姿は、ありし日に祖母から聞いた戦時中の悲劇を思い出させた。私たちは、終戦後の日本を知っている。沖縄だけでなく日本という国が、日本人の食生活がどう変化したのかを知っている。だからこそ本作のセリフが心に刺さる。この作品を「戦争はいけない」という安直なセリフで受け流してはならない。

【著者プロフィール 中川真知子】
映画xテクノロジーライター。アメリカにて映画学を学んだのち、ハリウッドのキッズ向けパペットアニメーション制作スタジオにてインターンシップを経験。帰国後は字幕制作会社で字幕編集や、アニメーションスタジオで3D制作進行に従事し、オーストラリアのVFXスタジオ「Animal Logic」にてプロダクションアシスタントとして働く。2007年よりライターとして活動開始。「日経クロステック」にて連載「映画×TECH〜映画とテックの交差点〜」、「Japan In-depth」にて連載「中川真知子のシネマ進行」を持つ。「ギズモードジャパン」「リアルサウンド」などに映画関連記事を寄稿。

【関連記事】
「舞台劇の臨場感と映画ならではの表現に瞠目」村松健太郎(映画ライター)|映画『木の上の軍隊』マルチレビュー
「寓話か、絵空事か──軍国主義の影を直視できたか」山田剛志(映画チャンネル編集長)|映画『木の上の軍隊』マルチレビュー
「笑いの裏に潜む切なさ」近藤仁美(クイズ作家)|映画『木の上の軍隊』マルチレビュー
 

【了】

error: Content is protected !!