「笑いの裏に潜む切なさ」近藤仁美(クイズ作家)|映画『木の上の軍隊』マルチレビュー

公開中の話題作を4人の評者が“忖度なし”で採点する新企画「映画チャンネル」マルチレビュー。今回は、堤真一×山田裕貴共演の映画『木の上の軍隊』を徹底レビュー。果たしてその評価は? 点数とあわせて、本作の魅力と課題を多角的に掘り下げる。※評価は5点満点とする。(文・編集部)

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笑いの裏に潜む切なさ

近藤仁美(クイズ作家)

【採点評価】4点

 心にずしんとくる良作。コミカルな場面が多数あり、登場人物とともに笑って楽しめるのだが、それゆえかえって、戦争が当時の人々の生活にどのような影響を与えたか、生々しく感じることができる。

 本作は実話がベースになっており、その点でも興味深い。戦時の知恵、人の心の機微、日々のささやかな喜びなど、こまごまとしたことが丁寧に描かれている。また、鬼の上官(堤真一)が、ともに生活をするうち戦闘経験の浅い新兵(山田裕貴)をしだいに認めていく様は、どこかほほえましい。そして、彼らが“初めて勝利を味わった”とする場面には、おかしみの裏にえもいわれぬ切なさがある。

 間違いなく、この夏観て損のない一作。

【著者プロフィール 近藤仁美】
クイズ作家。国際クイズ連盟日本支部長。株式会社凰プランニング代表取締役。これまでに、『高校生クイズ』『せっかち勉強』等のテレビ番組の他、各種メディア・イベントなどにクイズ・雑学を提供してきた。国際賞「Trivia Hall of Fame(トリビアの殿堂)」殿堂入り。著書に『クイズ作家のすごい思考法』『人に話したくなるほど面白い! 教養になる超雑学』などがある。

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【了】

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