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忙しない日常を生きる上でのお守り

映画『インサイド・ヘッド2』
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 今作は視覚的にもきわめて充実している。豊富なキャラクター数でも満足感の高い作品となっており、2DとCGグラフィックゲームを再現したテイストのキャラクターが登場するなど、アニメーションの醍醐味を存分に味わえる作品になっているのだ。

 特に、ゲームのグラフィックテイストのキャラクターであるランス・スラッシュブレードは、登場するディズニーキャラクターの中では異色の存在として、スクリーンでは良いアクセントになっていた。

 さらに、2Dアニメーションのキャラクターとして登場したブルーフィーと、その腰に巻いてあるアイテムを出してくれるポーチーに筆者は強く惹かれた。

 というのも、ライリーが実は大好きだけど、恥ずかしくて秘密にしていることを象徴したこのキャラクターたちの登場シーンは、ミッキーマウスクラブハウスを彷彿とさせる演出で描かれていたからだ。幼少期を思い出してとても懐かしい気持ちになった観客も多いのではないだろうか。

 しかしながら、今作の視覚効果の真髄は、ギミックの部分にあるわけではない。映画の根幹的なテーマを十全に表現しているから素晴らしいのだ。

 映画では、ライリー自身を形成する信念の変化が視覚的に表現されており、ライリーが揺れ動く様を、外面と内面その両方から見ることができる。

 これまでライリーが持ち合わせていた、私は善い人という信念から、シンパイが司令部をジャックすると、私はダメだという方向へ変わっていく。心配が感情的に先行することによって、悪いイメージが循環し、自分で自分を追い詰めていく。

 これは誰しも、新しい環境に飛び込んだ際や、新しい生活が始まる際に経験することではないだろうか。

 今作の意義は、そうした感情のざわめきをファンタジーの殻に包みながら視覚化することで、観る者の想像力に働きかけ、忙しない日常を生きる上でのお守りのような役割を果たしてくれる点にある。

 想像してみてほしい。思考がネガティブなループに陥ってしまった時や、感情を発散させる手立てがない時、頭の中の司令室でシンパイが仕事をしていると考えると、少しは気持ちが楽になるのではないだろうか。

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