母親を映さないという「不在演出」に注目
本作は、映画『散歩する侵略者』(2017)、『くれなずめ』(2021)、『市子』(2023)と同様に、小劇場系の演劇作品を原作とした作品だ。しかも「片田舎の古い温泉旅館」を舞台にした(ほぼ)ワンシチュエーションモノ。
舞台原作の映画作品でいうと『笑の大学』(2004)や『くちづけ』(2013)、『アルプススタンドのはしの方』(2020)などのように、あまり外に出ずに同じ空間でドラマが展開する、非常に見やすい作品となっている。
時間経過を表すために挿入される外観の画の直前にある「オチっぽい台詞」や、三姉妹の会話の話題の移り変わり方の強引さ、カットを割り過ぎずにキャストの演技を見せる演出法などからは、確かに演劇的な勢いを感じる。
また、『お母さんが一緒』というタイトルでありながら、その母親の顔を一切見せない作りも、演劇原作の作品らしい。この演劇的な「不在演出」がより観客の想像力を掻き立て、観ている人それぞれの「お母さん」を無意識に重ねさせてくれる。