映画『ペナルティループ』の新しさ
『ペナルティループ』の新しさ、それは「主人公が初っ端からループに気づいている」ところだろう。主人公の岩森淳(若葉竜也)は、2周目の6月6日突入も何一つ顔色を変えずに、ただループする日々を繰り返す。
なので、ループものに必ずと言っていいほどある、時間が繰り返していることに徐々に主人公が気づくシーンや、「ど、どうなってんだよこれ!」とパニックになるシーン、ループの中で徐々にそれから抜け出す方法を見つけるシーンなどが存在しない。
それどころか主人公は、自分がループの渦中にいる事実も原因も抜け出し方も知っている。それはなぜか…このループが「契約に基づいて行われているループ」だからだ。
恋人を殺された岩森は、何度も加害者を殺して復讐できるサービス「ペナルティループ」に契約書にサインをする。そして、与えられた仮想現実内でのループの日々の中で、恋人を殺した男(伊勢谷友介)を毎日毎日殺していく。
全ては大切な人を失ってできた心の穴を埋めて、再び止まった時間を動かすために。
本作でループは、一種の「セラピー」として機能しているように感じた。ループは現象ではなく、被害者遺族となった主人公の心を保つための治療法。
来る日も来る日も悲しみに暮れ、まさにループのような日々を送っていた岩森の、そんなどんよりループから抜け出すための手段が『ペナルティループ』なのではないだろうか。なんて優しい話なんだろう。
返り血を浴びた若葉竜也がいっぱい立っているメインビジュアルからは想像できない優しいループものだ。