アメリカ同時多発テロで顕在化した「憎しみの連鎖」
本作は一見してわかるように現実の世界情勢を作品舞台に反映させている。
原作漫画の連載が開始した2003年は、アメリカから大量破壊兵器保有の疑惑を向けられたイラクとアメリカ主導による多国籍軍による「イラク戦争」が勃発した年でもある。
本作のペルシア王国は、“大量殺戮ロボット”の保有が疑われるという点で、当時のイラクと重なる。
また連載当時、日本では小泉政権により「イラク特措法」が成立。人道的復興支援として自衛隊を「非戦闘地域」に限定して派遣した。
これも国連平和維持軍として参加するものの、実際の軍務にはつかず、平和の象徴としてアイドル扱いされる本作のアトムの描写と重なる。
このように『PLUTO』は、50年以上前に発表された作品である『鉄腕アトム』を原作にしているものの、アメリカの同時多発テロにより顕在化した「憎しみの連鎖」を正面から描いている。