映画『ラヂオの時間』【ネタバレあり】あらすじ
しかし、問題は終わらない。シカゴには海がないため、「海岸を歩いていたメアリーが高波にさらわれ、マイケル・ピーターに救われて恋に落ちる」という展開に矛盾が生じる、というのだ。
ここで一計を案じたのは、ナレータの保坂だった。メアリー・ジェーンが山で遭難し、ダムの決壊に巻き込まれていた―。そんな筋書きにすればいいではないか。
かくして物語は、「裁判所帰りのメアリーが突如豪雨に遭遇、ダムの決壊に巻き込まれ、以前見知った男に助けられる」という筋に改変。
新たな効果音の準備のため、ハインリッヒ役の広瀬光俊と保坂がそれぞれアドリブとニュース読みで時間を稼ぐ。
しかし、ここで再び問題が起こる。マイケル役の浜村錠が、放送中に勝手にパイロットのドナルド・マクドナルドと名乗ったのだ。
実は浜村、設定を漁師からパイロットに変更したいと放送前に要求しており、牛島の説得で却下されていた。
このままでは、「漁船の転覆で消息を絶つ」という筋書きと矛盾が生じてしまう―。スタッフたちがまた頭をひねる中、今度は牛島が「ハワイ上空で消息を絶つ」という展開を提案する。
筋書きはこうだ。ドナルドと再会したメアリーは、ハインリッヒを捨ててドナルドのもとへ走る。しかし、そんなメアリーのもとに、「ドナルドがハワイ上空で消息を絶った」という電報が届く―。
みやこの夫は、この筋書きに、メアリーとハインリッヒが自分たちをモデルにしているとみやこを問い詰めるが、軽くあしらわれる。
そんな中、アシスタントプロデューサーの永井スミ子が、ラジオ局のスポンサーに航空会社がいることを牛島に報告。堀ノ内からも電話を受けた牛島は、急遽「パイロット」から「宇宙飛行士」に変更する。
しかし、「ハインリッヒが消息を絶つ」ということは、すなわち彼の死を意味することであり、必然的に再登場もなくなる―。
この事実に気づいたのっこは、メアリーが一人で生きていく宣言をするラストシーンを提案。のっこと堀ノ内に逆らえない牛島は、このストーリーをすんなりと受け入れる。
しかし、この結末に納得できないみやこは「メアリー・ジェーンとマクドナルドは再会しなければならない」と主張。スタジオに立てこもり、「台本どおりできないなら名前をはずして」と訴える。
この状況に、ディレクターの工藤が、みやこだけでなく自分たちのためにも脚本を変えてはならない、と主張。
牛島は、自分たちも納得いかないことばかりだが、名前で責任をとらなければならないとみやこを説得し、スタジオから追い出す。
物語がのっこの望む展開へ進む中、ドナルド役の浜村がスタジオを後にする。そんな中、みやこに同情してスタジオを飛び出した工藤は、音効スタッフの太田黒(梶原善)とともに物語を強引に元に戻す作戦を立案。
メイン調整室からスタジオの中にいるバッキー、みやこ、保坂に作戦を伝える。
ハインリッヒが自動車でミシガン湖に飛び込んだ一報を聞き、たった一人、荒野で生きていく決意を固めるメアリー・ジェーン―。物語が幕を下ろそうとしていたその時、工藤がスタジオにやって来てキューを出す。
続いてやってきたのは、ドナルド役の浜村だ。スタジオを飛び出した太田黒が、彼を引き戻したのだ。
そして、保坂は、台本にはなかったナレーションを語りはじめる。それは、ドナルドが、真っ赤に燃え盛る物体にまたがり、再びメアリーのもとにやってくるというものだった。
浜村は逃げ出そうとするが、スタッフに押さえつけられてマイクの前に立つ。
そして、そこに、とある男が現れる。駐車場のガードマンの伊織だ。地上に降り立ったドナルドは、メアリーの名前を叫ぶ。すると、メアリーは「お帰りなさい」と答え、お互いに駆け寄る。
ここで伊織の出番だ。彼は、雑誌で自らの頭を叩き、50円玉の穴を吹いて祝福の花火を演出する。
かくして物語は、無事に幕を下ろす。工藤にお礼を伝えるみやこ。堀ノ内から続編を書くようアドバイスされたみやこは、その時には工藤にディレクターをしてほしいとお願いする。
しかし、プロデューサーの牛島は、工藤の暴挙に怒り心頭だ。牛島は、ビルの入り口で、工藤に始末書を要求。何のためにこんなことをやっているのか、と問いかけると、みんなが満足できるものを作るためでしょう、と応える。
と、そこへ、番組を聞いていたトラック運転手(渡辺謙)がやって来て、泣きながら感動を伝える。牛島はその姿を見て微笑み、工藤と続編のアイディアを話しながら歩き出す。
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