90年代の日本のカルチャーを散りばめた作りが素晴らしい
日本人視点で見ると二人を繋ぐものに90年代を代表する日本の漫画と映画が出てくるのが微笑ましい。
主人公のジミーは日本の漫画が大好きで、特に「スラムダンク」の愛読者。“天才ですから!”というセリフが発せられた時には、自分が“スラムダンク世代”ということもあって、試写室内でテンションが上がってしまった。
また中盤の二人の映画デートで見るのは岩井俊二監督の『Love letter』。90年代を代表する日本の恋愛映画の一本が二人を繋ぐ。ジミーの旅のパートでは北海道ではないものの雪原が出てきて『Love Letter』へのオマージュシーンが登場する。
ミッド90sの日本のカルチャーに興味を持っている人には見逃せないシーンだろう。
とはいえ、映画の中盤以降のアミの急な帰国からの展開はすこし読める部分があるというのが正直なところ、18年を経てのジミーの日本での旅が回顧的なものになっているというのも、18年後の“あること”が読めてしまう。
ただ、そのままで終わらせないのがこの映画の良いところだ。旅の行き着いた先で、ある事実が描かれるだが、その事実に対する36歳になったジミーのリアクションが少し捻った形で描かれていて、結果的に映画は不思議な感触、ある種のハッピーエンドに近い感覚を残して終わる。
こういう展開があると映画に“味”が出てくる、藤井道人監督がこういう小技を効果的に効かせてくるのを見て、やはり藤井道人監督にはラブストーリーが合うと思うところだ。