宮崎駿の到達点―演出の魅力
本作は、2001年公開の宮崎駿監督作品。公開当時は、『タイタニック』を抜いて日本の歴代興行収入を第一位を記録し、その後2020年に『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』に記録を更新されるまで20年近く記録を固持した。
また、ベルリン国際映画祭の金熊賞をはじめ、アカデミー賞のアカデミー長編アニメ映画賞など、数々の賞を受賞。さらに2017年に開催された「21世紀最高の外国語映画ランキング」(ニューヨークタイムズ選定)では、堂々の2位に選ばれている。そして2022年には、橋本環奈・上白石萌音のW主演で舞台化。公開から20年を経た今も愛され続ける作品となっている。
そんな本作だが、制作のきっかけは「友人である10歳の少女を喜ばせたい」というなんとも素朴なもの。この少女は、宮崎のビジネスパートナーである日本テレビの映画プロデューサー、奥田誠治の娘で、本作の主人公である千尋のモデルでもある。
「赤ん坊の頃からよく知っているガールフレンドが五人ほどいまして、毎年夏に、山小屋で二、三日一緒に過ごすんですが、その子たちを見ていて、この子たちのための映画が無いなと思いまして、その子たちが本気で楽しめる映画を作ろうと思ったのだ、狙いというかきっかけです」(『千と千尋の神隠し 千尋の大冒険』より)
なお、本作には、制作の動機以外にもあちこちに宮崎の「個人的な事情」が散りばめられている。次ページでは、早速本作の脚本に秘められた要素について説明したい。