斎藤工「普通のドラマではできないことができちゃう」
演者が作品全体のことを考えて動く制作体制

斎藤工 リリー・フランキー、写真:武馬怜子
斎藤工 写真:武馬怜子

―――斎藤さん演じるヨシオは、ハルの懐に上手く飛び込む稲垣さん演じる男とは対照的に、可愛げのある不器用さがより際立つ形になっていて、観る人もヨシオというキャラクターへの愛着がより深まったのではないでしょうか。

リリー「season3はヨシオの魅力が一番よく出た回だったかもしれないね。ヨシオって不器用な人なんだけど、可愛いところあるなって」

斎藤「ストーリーの中心を担っているつもりは全くないんですけど、視聴者の方が思いを込めやすいキャラといいますか、ダメな部分がある種の共感を呼んで、ドラマの世界に入るための媒介の役割を果たしているのかもしれないですね」

リリー「あとseason3のヨシオが一番“素”の工さんに近いような気がします。可愛らしさとか人間臭さにおいて」

斎藤「そうですかね(笑)。リリーさんはその場のインスピレーションを大事にすると同時に、周りの人のことも凄く丁寧に見てくださる方で、ドラマのかじ取り役でもあるんです。今回もこれまで培ってきたものの延長で多くが成り立っていて、個人的にはそれこそがseason3の主題だと思っています。実際、カクレモモジリ(『こびとづかん』のキャラクター)を沙莉さんが好きで、ルックスも似ているみたいなくだりが前回あって、それが活かされていたりするわけです」

リリー「カクレモモジリのアイデアは、season2の時にたまたま沙莉さんが発したセリフがきっかけだからね。ハルが男性と心を通わせ合うとなった時、設定的に外で知り合うのはなんか不自然だなと。そこは今っぽく、SNSで知り合う。きっかけは、カクレモモジリがいいんじゃないか、と。前回やったことが次回の下敷きになるんですよね。『あそこは膨らました方がいい』とか言い合いながら作っています」

―――リリーさんと斎藤さんは、脚本の段階から関与されているのですね。

リリー「監督とプロデューサーをはじめとしたスタッフと工くんと僕のグループLINEがあるんですよ。内容面の話はそこですることが多くて。撮影中もそんな感じなんです。現場で『ここでこのセリフを言うのはどうなんだろう』といった疑問が浮かんだら、その場で無くしてしまったり。それは自分の出ているシーンに限らず、作品のためになると思ったら率直に意見を伝えて、臨機応変に対応していく。それはseason1から変わりません。イチ演者が自分の出番ではないシーンにアイデアを出すなんて、普通のドラマでは絶対にやらないことです。例えば、season2で雪が積もったテニスコートで三角テニスを行う場面とか、即興的なアイデアで決まりましたから。このドラマは最初からそういう作り方をしていて、どこか部活っぽいところがある」

斎藤「普通のドラマではできないことができちゃうっていうところは、この作品の強みだと思います」

リリー「自分が出ていないシーンに関して、監督とかに『ここどうなんでしょうか。あんまやんない方がいいんじゃないですか?」と意見するなんて、他のドラマの現場だったら凄く面倒くさい、言ってしまえば危ない奴じゃないですか。この作品の現場では、それでもスピーディーに撮れたりするわけです」

―――ご自身のお芝居のことだけではなく、作品全体のことを考えて参加されているのですね。また、尚且つスムーズに進行できるということは、キャストースタッフ間で阿吽の呼吸でコミュニケーションがとれていることの証ですね。雪テニスと言えば、秋を舞台にした今回は雨のシーンが多いですね。

リリー「撮影日に実際に雨が降っていたから、雨のシーンにせざるを得ないので」

ーーじゃあ“カッパヨガ”のシーンは元々予定されていたわけではなく、天候に恵まれなかったということで、即興的に生み出されたアイデアなのでしょうか?

斎藤「もちろんです」

ーーリリーさんと斎藤さんが離れたところから“カッパヨガ”の様子を見ていて、リリーさんの「透けてる感じがいい」といったセリフも、元々の脚本には全く書かれていないと。

リリー「そうです。元々は雨設定じゃないわけですから。ヨガのシーンはその日に撮るしかなかったので雨天決行。結果、“カッパヨガ”だったから面白いシーンになりました」

斎藤「でも、ヨガの先生にお話を聞いてみると、雨天に行うヨガって、地球とコミュニケーションがとれて、心と体が浄化されるらしくて。 実は“カッパヨガ”はすごくスタンダードだったという」

リリー「雪テニスと並ぶ令和の名シーンになったと思いましたね」

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