迷い続ける恵介(笠松将)

『ガンニバル』シーズン2 © 2025 Disney
『ガンニバル』シーズン2 © 2025 Disney

 なんとか攻め込んできた後藤家を制圧した大悟ら警察だったが、その一方で妻の有希(吉岡里帆)と娘のましろ(志水心音)は人質に取られていた。当然、助けるほかに選択肢はない。

 有希の「何でもいいから早く来て」というSOSに対し、「待ってくれ、すぐに行くからな。お前らを傷つけた奴ら、全員ぶっ殺してやるからな」と答える。

 この暴力的な言葉を、勇気づけるために囁くように言っているのがあまりに印象的だ。妻の気持ちは置いてけぼりで、暴力には暴力で返すという大悟の考え方がちらりと垣間見える。

 有希が「はあ?」と理解できていないのもそのはずで、もう普通とは違う(狂気の)世界に大悟が足を踏み入れてしまったのだと感じてしまう。

 大悟とは対照的に、後藤恵介(笠松将)は迷い続けている。誰にも死んでほしくないし、仲間である後藤家はもっと失いたくない。だが、多くの血が流れてしまった以上、もう波には抗うことはできない。そんな無情を彼の表情からは常に感じ取れる。

 恵介は村に幽閉されていた子供たちの居場所を知らせた裏切り者でもあり、仲間たちに糾弾される危険性もはらんでいた。その窮地を救ったのが育ての父である後藤清(六角精児)。

 情報を警察に漏らしたと話し、恵介を生かそうとする。けじめを付けるため、恵介はナイフを突き立てる。後藤家の誰よりも殺しを嫌う彼が、自らを育てた父親を手にかけるのはいかなる気持ちなのか。

 恵介のそんな苦悩は大悟を前にして、「どうすりゃええんかわしにはわからんのじゃ」と明かした言葉にも表れている。殺し合いは望まないが、愛する人も守りたい。

 しかし後藤家もどうにかしたいという、八方塞がりの状況から恵介はどの道へ進むのか。同情心を禁じ得ないが、彼の決断はしかと見届けたいところだ。

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