「表情や仕草など微妙な違いで印象が変わる」
瀧本美織が丁寧に体現する複雑な心情
―――瀧本美織さん演じる、真人の妻・神城澪は、一見誰にでも優しく見えるものの、過去のトラウマを持つ影のある人物でした。表情や声色が重要になってくると考えますが、瀧本さんのお芝居はいかがでしたか?
「澪もまた、非常に難しい役だったと思います。台本通りに演じてしまうと、“ただ騙されている人”という一面的な印象にとどまってしまう。しかし、その奥には、真人を超えるような深い感情や歪みがあり、物語終盤には、彼との“秘めた対決”のような緊張感が描かれています。今仰っていただいたように、表情ひとつとっても微妙な違いで印象が変わる人物ということもあり、瀧本さんとは、繊細なニュアンスを共有させていただきました」
―――城定監督から瀧本さんへ、どのような説明があったのか具体的にお聞きできますか?
「『このシーンで泣いてください』といった指示はあえて出さず、瀧本さん自身の感情に委ねました。思いもよらないタイミングでこぼれる涙や、何気ない瞬間の自然な仕草、そうしたひとつひとつの演技が神城澪というキャラクターを身近にし、生きた存在として感じさせてくれるんです。
澪は、下手をすると、ただ弱い女性という印象だけが残る危うさがあるので、ある意味この役は、真人以上に演じるのが難しかったと思います。けれど瀧本さんは、その複雑な心情を丁寧に汲み取り、見事に体現してくれました」