「役者の動きや呼吸にカメラを合せていく」
城定監督の柔軟な撮影スタイル

城定秀夫監督 写真:武馬怜子
城定秀夫監督 写真:武馬怜子

―――城定監督は、決めたカットでしかお撮りにならないと聞いたことがあるのですが、本作でも同様の撮影方法を取られたのでしょうか?

「そうですね。とはいえ、役者さん芝居を実際に見て、そこで見えてきたものに対してどう撮るかをその場で判断して決めているので、その場で柔軟に対応するために、前もって決めすぎないようにしています。“決めたカットしか撮らない”というのは、芝居を見た上で『これだ』と決めたものを撮っている、ということかもしれません」

―――あらかじめ決めていたカットというわけではなく、その瞬間に生まれたものを捉えていくのですね。キャストやスタッフのみなさんには、城定監督のビジョンをどのように共有されているのでしょうか?

「キャストに対しては、カット割りなど技術的な説明はしません。もちろん長回しのシーンなど、段取りが必要な場面は、『ここで一度立ち止まってほしい』と多少の指示は出しますが、役者の動きや呼吸にカメラを合せていくスタイルを取っています。

スタッフへの共有については、段取りの段階で全員で芝居を見て、『この動きに合わせて、ここを通って撮影しよう』と、その場で確認し合います。いわゆる“オールドスタイル”な進め方かもしれませんね。最近は、複数のアングルから撮っておいて、編集で構成するという監督も増えていますが、私はそういうやり方はあまりしません」

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