「自分の中の引き出しがどんどん増えた」FODドラマ『エリカ』主演・茅島みずきが語る、役作りの苦悩とは? 単独インタビュー

text by タナカシカ

楠本哲によるサイコホラーコミックスを原作としたFODオリジナルドラマ『エリカ』が、8月1日(金)よりFODにて独占配信される。本作は、主人公・エリカの歪んだ本性と壊れていく高校教師の姿を描いた作品だ。今回は、主演・茅島みずきさんにインタビューを敢行。役作りや撮影の裏話などをたっぷりとお聞きした。(取材・文:タナカシカ)

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原作と台本から導き出したエリカ像
“ただのホラーではない魅力”

茅島みずき 写真:Wakaco
茅島みずき 写真:Wakaco

―――本作は、主人公の閉野エリカが持つ狂気や歪みが人を虜にさせるサイコホラーです。まずは、本作に参加することになった経緯を教えてください。

「マネージャーさんからこの作品のお話をいただいた際に、初めて原作を読みました。普段、ホラー作品は少し苦手なジャンルなのですが、この作品はただ怖いだけでなく、人間の本質に迫るような怖さがあって、先の展開も読めず一気に引き込まれました」

―――異常なまでに家族に執着し、怒らせると何をするか分からない…そんなエリカというキャラクターを演じることについて、どのように感じましたか?

「原作には迫力のあるシーンが多くて、『この場面ってどうやって映像化するんだろう?』と、想像しながら読んでいました。表情のインパクトが強いシーンもたくさんあったので、自分なりにイメージを膨らませたり、研究しながら読み込んでいました」

―――役作りにあたり、意識したことや顔の表情の作り方や準備されたことって具体的に他にありますか。

「今回は、自分の実体験と重なる部分があまりなかったので、とにかく原作と台本を繰り返し読み込んで、そこから想像を広げるしかないなと思っていました。やったことのない表現や感情が多かったので、悩むシーンもたくさんあって…。そういうときは、演出の大内隆弘さんと相談しながら、ひとつひとつ丁寧に向き合っていきました」

怒り方に“グラデーション”をつける演技アプローチ

茅島みずき 写真:Wakaco
茅島みずき 写真:Wakaco

―――エリカは感情の起伏が非常に激しいキャラクターですが、たとえば第1話では、担任の青嶋一哉先生(渡辺大知)の優しさに思わず涙を流す一方で、青嶋先生に距離を取られた瞬間、怒りを爆発させる…そんな印象的なシーンが描かれています。こうした感情の振れ幅が大きい役どころを演じるうえで、特に難しかった点や、撮影時に印象に残っていることはありますか?

「エリカには、演じていてすごく幼い印象を受けました。実年齢よりもずっと子どもっぽいというか、小学生くらいの感情の素直さを持っているように感じたので、そこは意識して演じました。ただ、エリカ自身、いろんな感情が入り混じっているシーンも多かったので、その“ぐちゃぐちゃした感情”を表現するのは難しかったです」

―――エリカは青嶋先生に対しては感情を露わにして怒りを爆発させるのに対し、牛田先生(續木淳平)や教頭先生の閉野フサ(山本道子)には無表情のまま静かな怒りを向けています。怒りの表現の仕方を変える場面では、どのような点に気を配って演じられましたか?

「特に『この人にはこうしよう』といった具体的なプランはなく、自分の中では常に“青嶋先生が大好き”という気持ちを忘れないようにしていました。だから、自然と他の人たちのことは目に入らないというか、『青嶋先生さえいればそれでいい』という感覚でお芝居をしていたと思います」

自分の世界に没入することで生まれるエリカの歪み

茅島みずき 写真:Wakaco
茅島みずき 写真:Wakaco

―――怒っているシーンよりも、むしろ笑顔でわがままを言うような場面の方が、エリカの“狂気さ”がより際立っていたように感じました。特に、笑顔の裏にある怖さがとても印象的だったのですが、そういった“笑顔”のシーンを演じるうえで、意識されたことや工夫されたことがあれば教えてください。

「とにかくエリカは、青嶋先生の言動ひとつひとつに一喜一憂する子です。すべてをポジティブに受け取ってしまうところもあって、いい意味で“都合よく”解釈して、どんどん突っ走ってしまうタイプというか。たとえば『先生に会えるのが嬉しい』『連絡先をもらえて嬉しい』って喜んでいるけれど、実際は自分が無理やりそう仕向けているだけだったりして…。でも、本人は純粋にワクワクしているんですよね。だからこそ、エリカの“自分だけの世界”に深く入り込むことを、特に意識していました」

―――演じる中で難しいと感じる場面もあったと思いますが、そういった時はどなたに相談されていたのでしょうか?

「やっぱり自分でもどう演じたらいいか迷う場面は多々あって、段取りやテストのときに戸惑っていたんです。そんなとき、大内隆弘監督がそれに気づいてくださって、『次はこうしてみようか』と具体的な提案をしてくれたんです。そのひと言ひと言が視野を広げてくれて、『じゃあ次はこう演じてみようかな』と、自分の中の引き出しがどんどん増えていったように思います」

自分の演技に“ゾッと”した瞬間

茅島みずき 写真:Wakaco
茅島みずき 写真:Wakaco

―――本編はもう観られましたか? ご自身が1番怖いと感じたエリカのシーンを教えてください。

「観ました。勝手に家にいきなりいたり、振り向くとエリカがいる。というシーンは、自分でもゾッとしました(笑)」

―――「そこにいる」というのは、ホラー作品のような撮り方でしたね(笑)

「怖いですよね(笑)。あと、牛田先生をタイルで殴りつけているシーンを観たときは、自分の演技を観て『私こんなに楽しそうな顔で殴ってたんだ…』と、自分でも怖かったです(笑)」

―――一方で、エリカが殴られるシーンはスローモーションで描かれていて、どこかコメディタッチな印象も受けました。あの演出については、撮影時点で「スローモーションになる」という説明はあったのでしょうか?

「はい、撮影の時点で『ここはスローモーションになる』という説明がありました。実際にスローで演技するのは初めてだったので、とても新鮮でしたね。自分で表情をつくりながら何パターンも試したのですが、監督から『それは違う』『もうちょっとこうしてみよう』と何度も指示をいただいて。何度もテイクを重ねて、細かく調整しながら演じました」

―――ビンタをする青嶋先生役の渡辺さんとも話し合われたのでしょうか?

「青嶋先生役の渡辺さんにもアドバイスをいただきました。『こういう表情がいいんじゃない?』とか、スローではあるけど、『俺がもっと強く叩こうか?』なんて冗談まじりに提案してくださって(笑)、現場の空気を和ませてくれましたし、とてもありがたかったです」

―――本作は、かなり挑戦的な役だったと思いますが、茅島さんがこれまで演じた役と比べて、今回の役がご自身に与えた影響はありますか?

「今回の現場では、特に監督から“目の演技”について多くアドバイスをいただきました。この作品は目の動きにかなりこだわっていて、『このシーンではもっと目を大きく開いて怖さを出そう』とか、『目線はこう動かしたほうが効果的』など、細かい部分までご指導いただきました。

モニター越しに見ると、ほんの少しの目の動きや開き方だけで印象がまったく変わるんです。自分ではやっているつもりでも、映像で見ると全然足りていないことがあって…とても勉強になりました」

「エリカの心情が歌詞に重なった」
主題歌『distortion』に込めた思い

茅島みずき 写真:Wakaco
茅島みずき 写真:Wakaco

―――茅島さんが歌われている本作の主題歌「distortion」は、エリカの心情とどのように重なる楽曲だと思いますか?

「サビの部分をはじめ、歌詞にはエリカの心情やドラマの中での気持ちがよく表れていると感じました。ダークな曲調からサビで一気にポップになる展開も、明るいのにどこか不気味さが残っていて、そこがまたエリカの内面とすごくリンクしているなと思いました。ドラマの世界観にもぴったりな楽曲だと感じます」

―――サビで曲調がポップになることで、逆に不気味さや恐怖心が際立っているとのことですが、茅島さんご自身は、その狙いをどのように受け取られましたか?

「ずっと同じトーンで淡々と進む曲よりも、サビでガラッと曲調が変わることで、エリカの可愛らしさが感じられるようになっていて。曲自体はポップなのに、歌詞の内容はすごく重くて、そこに少し不気味さもあるのが印象的でした。歌うときは、基本的にはあえて感情を抑えて淡々と歌うことで怖さが出るように意識しつつ、サビではエリカの無邪気な一面が表れるように、少し明るく演じることを心がけました。エリカらしさが詰まった部分なので、特に大切にしたポイントです」

―――確かに、あの歌詞は少しおどろおどろしい印象もありましたが、茅島さんのあえて感情を抑えたような淡々とした歌い方がとても印象的でした。その表現には、エリカの内に秘めた心情や、どこか不気味さを感じさせるキャラクター性を込められていたのでしょうか?

「実際にいろんな歌い方のパターンを試してみた中で、最終的に1番ぞわっとするような印象を与えられたのが、感情を抑えて淡々と歌う表現でした。完成した楽曲を聞いたときも、その歌い方が一番しっくりきたんです。まわりの楽曲がリズミカルだったり、ダークな雰囲気やポップさを持っていたりとさまざまだったので、逆に自分はあえて抑えたトーンで歌った方がバランス的にも良いと思いました」

―――最後に、「映画チャンネル」にご登場いただいたということで、お好きな映画や最近見た映画などでおすすめがあったら教えていただきたいです。

「何度も繰り返し観てしまうくらい大好きなのが、『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016)です。最近もまた観返したのですが、やっぱり宮沢りえさんと杉咲花さんの圧巻の演技に、涙が止まらなくなってしまって…。物語が心に深く刺さって、自分にとって特別な作品だと何度観ても思います」

(取材・文:タナカシカ)

【作品概要】
FODオリジナルドラマ『エリカ』(全6話)
<配信>
2025年8月1日(金)20時~独占配信開始 以降毎週金曜日20時最新話配信
※配信日時は予告なく変更となる場合があります。予めご了承ください。
<出演>
茅島みずき ほか
<スタッフ>
演出:大内隆弘
脚本:青島太郎
音楽:丸橋光太郎
プロデュース:酒井綜一郎
プロデューサー:坂田航(ギークサイト)
<制作プロダクション>
ギークサイト
<制作著作>
フジテレビ

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【了】

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