センセーショナルな第一級のサスペンス〜演出の魅力
本作は、サスペンス映画の巨匠アルフレッド・ヒッチコックによるサイコサスペンス映画の古典的名作。『さよならをもう一度』のアンソニー・パーキンスがサイコキラー・ノーマンを、被害者・マリオンを『若草物語』のジャネット・リーが演じており、第33回のアカデミー賞には、監督賞や助演女優賞など4部門でノミネートされた。
本作の撮影時、ヒッチコックは齢60歳。スターシステムなど、ハリウッドの慣例に従ってきた彼は、自身の作家性を存分に発揮できる題材を求めていた。そこで目をつけたのが、ロバート・ブロックの原作である。
彼は、原作の映画化権を9000ドルで買い取り、スタッフに本の買い占めを命令。撮影中もスタッフに緘口令を敷いたほか、観客にも物語の口外を禁じるなど、徹底した秘密主義を貫いたという。
そんなヒッチコックの努力(?)の甲斐もあって、世紀の傑作となった本作。とりわけ有名なのは、中盤のシャワールームでの殺人シーンだろう。バイオリンの甲高く不快な効果音に画面を斜めに降り注ぐシャワーの線がマリオンが受けた裂傷とリンクし、観客の感情を存分に煽る(思えば、本作のオープニングのアニメーションも「線」で構成されていた)。
なお、暴力描写や性描写は当時のハリウッドでは御法度。そう考えれば、本作がいかにセンセーショナルだったかが分かるだろう。