一流の俳優たちが生む“グルーヴ”
―――本作の最大の魅力は、綾野剛さん演じる辻本拓海や、豊川悦司さん演じるハリソン山中などのキャラクターだと思っています。キャスト陣には、一流の役者が名を連ねていますが、現場ではどのような演出をされたのでしょうか。
「皆さんプロですし、セリフを完璧に入れた状態で撮影に臨まれるので、演出らしい演出は特にしなかったですね。特に、綾野さんと豊川さんとは撮影前に会っていたのですが、そこで演じるキャラクターについて話していたので、現場はスムーズでした。
ただ、集団演技となると、バンドのセッションに似て、セリフ以外の全体のノリというか、グルーヴを出す必要がある。なので、グルーヴを全員で共有するまでテストを重ねました。特に交渉や契約のシーンは、撮影にかなり時間がかかりそうだったので、別の日に集まってリハーサルをやりました」
―――今回の作品は、多くのキャラクターが当て書きされたと聞きました。大根監督が特にハマったと感じたキャラクターは誰でしょうか。
「皆さん素晴らしかったのでなかなか選べないですが、強いて言えば山本耕史さん演じる石洋ハウスの青柳隆史ですかね。
青柳は、かなりベタな役で、演じ方によってはコミカルにもなりうるんですが、山本さんは本当にギリギリの線で演じてくださって。改めて、唯一無二の役者だと再確認しました」
―――本作では、情報屋・竹下(北村一輝)の子分役でマテンロウのアントニーさんが出演されています。アントニーさんは、監督ご自身のご指名でしょうか。
「そうですね。アントニーは、バラエティ番組に出始めた時から注目していました。あの存在感とフォルムは、プロの役者さんでもなかなか得難いものなので」
ーーーアントニーさんは、豊川さんや綾野さんとがっぷり四つに組むシーンもありますが、お二人とアントニーさんで演出上の違いはあったのでしょうか。
「特にありませんでした。というより、僕は、そもそも演技に上手下手ってないと思っていて、演技が下手に見えたら、適格な芝居や演技を与えられなかった監督の責任だと思っています。
もちろん、専業の役者さんの方がセリフ回しが上手かったりしますが、その人らしい個性を引き出す方が重要だと思います」