徹底した「視聴者目線」
―――警察のシーンでは、原作から新たにべテラン刑事下村辰夫(リリーフランキ―)の部下として、新米刑事の倉持(池田エライザ)が追加されています。このキャラクターはどういった思いから追加されたんでしょうか。
「基本的に僕は、映画やドラマを作る際、自分が観客・視聴者だったらどんな展開が一番面白いかを常に念頭に置いています。で、視聴者目線で見た時に、地面師サイド、騙される企業サイド、地面師に追う警察サイドと、3つの柱で話を進めていくと、辰さん一人ではどうしても警察サイドが弱くなってしまうし、刑事1人の単独行動というのも無理が出てきてしまう。
で、書き進めているうちに、ベテラン刑事と新人刑事の『バディもの』にしたら面白いんじゃないか、と思い立ち、新たに倉持というキャラクターを加えました」
―――第4話では、地面師集団の犯罪を追う2人の身に、とある意外な展開が起こります。視聴者は、かなり度肝を抜かされる展開ですが、これも視聴者目線を意識しての描写でしょうか。
「そうですね。ここでこうなったら観ている人は絶対驚くし、絶対に続きを観たくなるはず、と思いながら書きました。ちなみにこの展開は、僕が大好きなケイト・ウィンスレット主演のドラマ『メア・オブ・イーストタウン』(2021)から影響を受けてますね」
―――大根監督は、パパラッチをテーマとした『SCOOP!』(2016)や、足利事件に材を取った『エルピス-希望、あるいは災い-』など、社会派の作品を数多く撮られている印象があります。映像というメディアで社会問題を扱うことに、どのような意義を感じていますか。
「この問いはよく聞かれるんですが、正直僕自身は社会に何か訴えたいという気持ちは毛頭ないんですよね。
今回の作品も、大企業から金をだまし取るというジャイアントキリング的な痛快さから、地面師をエンタメ化したら見たことない作品が作れるんじゃないかと、そういった発想から作りましたし」
―――この点も視聴者目線なんですね。
「そうですね。僕は監督としての才能はないんですが、視聴者としては優秀だと自負していて、こんなNetflixドラマがあったら絶対に観るだろうな、という思いで作りました。
キャスティングもそうで、山本さんがこんな役を演じたら面白いだろうな、とか、こんな小池栄子が見たい、俺の思うトヨエツはこうだ、といった気持ちは常に忘れないように心がけています」