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『友近サスペンス劇場』大ヒットの理由は? 若い世代から支持されるワケ。作り手が語る制作の極意。参考にした意外な番組は?

text by 司馬宙

80年代から90年代にかけて、主婦たちの目を釘付けにした2時間サスペンスを完全再現したYouTube動画『友近サスペンス劇場』が、異例のヒットを記録している。そこで今回は、監督を務めた「フィルムエストTV」主宰の西井紘輝氏にインタビューを敢行。作品へのこだわりや2時間サスペンスの魅力について伺った。(取材・文:司馬宙)

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【西井紘輝(にしい・ひろき)プロフィール】

1994年兵庫県神戸市生まれ。関西大学社会学部卒業。2014年からYouTubeチャンネル「フィルムエストTV」を主宰。映像作家「にしい」として、現代の事象を昔の価値観で解釈・表現する〝アナクロ映像〟を考案し、多数制作。近年では、バンド「礼賛」のミュージックビデオ制作を手掛けるほか、友近主演の長編サスペンスドラマ『道後ストリップ嬢連続殺人』では脚本・監督を務めるなど幅広く活動中。

友近の”愛媛愛”が産んだ『友近サスペンス劇場』

監督の西井紘輝氏(©武馬怜子)

監督の西井紘輝氏。写真:武馬怜子

―――『友近サスペンス劇場』は、1時間半という長尺にもかかわらず、10日間で260万回再生と言う大ヒットを記録しています。今回の企画は、どのような形で実現したのでしょうか。

「私は元々、『フィルムエストTV』というYouTubeチャンネルで、1980年代のバラエティ番組やニュース番組を再現した動画を発表していました。

で、ご縁があって友近さんとコラボ作品を撮っていたんですが、去年の10月くらいに、地元の愛媛県を舞台にドラマを作りたいというご提案を直接いただきまして、そこから動き出しました」

―――西井さんから見て、友近さんはどういった方ですか。

「もう、殿上人(てんじょうびと)ですね。子供の頃からテレビで観ていた方なので、正直目の前にいると実感がわかないんですよ。撮影の時も、なんで今目の前に友近さんがいるんだろう、と不思議な感覚に陥りました。

それから、友近さんは、地元をとても大切にされている方で、友近さんを介して、地元のファンやスポンサーと繋がれました」

―――本作には、モグライダーの芝さんや時東ぁみさんも出演されていますが、キャスティングも友近さんが担当されたのでしょうか。

「メインのキャスティングは友近さんのご指名ですね。特に芝さんは、友近さんと同じ愛媛県出身で、演技もできそうということでご指名を頂きました。

時東さんに関しては、当初はレトロなイメージをあまり抱いていなくて、最初はハマるかどうか不安だったんですが、実際にメイクしてもらうとガラッと印象が変わりましたね。改めて友近さんのキャスティングセンスは凄いなと痛感しました」

―――友近さんは今回、エンディングテーマの「ジャスト・アローン」も歌われていますね。

「はい。元々は既存の歌を使う予定だったんですが、編集の段階で、ここまで世界観を作ったのなら、最後までやり抜こうということになり、僕から友近さんにお願いしました。

当初は僕が作詞・作曲をする予定でしたが、編集で手が回らなかったので、作曲だけは別の方に依頼しました」

―――最も苦労されたのは編集でしょうか。

「いえ、撮影ですね。スタッフの人数が本家の半分以下の15、6人で、なおかつ撮影期間も6日と極めてタイトだったので、睡眠時間が2時間の日もありました。

あとは、脚本の執筆も大変でしたね。実際、僕は映像制作会社に勤めていたんですが、お話をいただいてから会社を休職してリサーチと脚本の執筆に全力投球しました。

ちなみに、執筆中は、宮城県の山奥にある旅館に1人こもって、事件をシミュレーションしながら書いていた時期もありましたね(笑)」

―――撮影中は、演技指導などもされたのでしょうか。

「いえ、演者さんはみなさん現場に入る前に演技が出来上がっていたので、ほとんどなかったですね。友近さんはもちろん、芝さんや時東さんも“それっぽい演技”がすんなりできるので、かなり驚きました」

―――2時間サスペンスを見て育ってきた世代には、「2時間サスペンスっぽさ」が共通言語として浸透しているのかもしれないですね。

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