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古くて新しい「ネオ昭和」な手作り感

西井監督が制作した架空企業のロゴ(©武馬怜子)

西井監督が制作した架空企業のロゴ。写真:武馬怜子

―――「フィルムエストTV」のチャンネル視聴者層について教えてください。

「20代から60代まで幅広い方に見ていただいていますが、特によくご覧いただいているのは、25〜35歳ですね」

―――「フィルムエストTV」のテイストをリアルタイムで体感している最後の世代ですね。

「そうですね。年配の方よりは、どちらかというと若い世代に楽しんでいただけているみたいです」

―――最近は、Z世代を中心にSNSで「ネオ昭和」というブームが起こっていますが、Z世代の目には、80年代はむしろ新鮮なものとして映っているのかもしれないですね。

「そうですね。リアクションを見ても、『80年代はこんなことがまかり通っていたのか!』という驚きが多いようです。

ただ、『フィルムエストTV』の動画は、1980年代の映像をそのまま模倣しているわけではなくて、随所に『ツイ廃』や『猫ミーム』といった今のトレンドを織り交ぜています。

なので、YouTube上で公開されている本物の過去の映像と見比べた上で、『歴史のif』を扱ったSF作品として楽しんでいただけているのかな、と思っています」

―――「フィルムエストTV」のレトロな世界観を構築する上で、カギとなる要素はなんでしょうか。

「最もこだわっているのは、テロップのフォントですね。昔のテレビ番組で使われていたフォントって、今は簡単に使えないものが多いんですよ。なので、専用の機械で打ち出したり、一から手作りしたりしています。

あとは映像の画質。撮影は基本的にデジタルで行っているんですが、当時の画質を再現するために、画質が劣化するまで複数回書き出しを行っているんです」

―――本当に手間がかかっているんですね。

「そうですね。テロップを書き出したり、1フレーム尺を伸ばしたりといった、令和だと簡単なはずの作業が、とんでもなく大変な作業になる。そういった意味では、一つ一つの工程を手作りしているという感が強いと思います。

ちなみに、『友近サスペンス劇場』の場合は、1989年のシンセサイザーの音をSEに使っています。やっぱり、1980年代当時のシンセサイザーでないと質感が出ないんですよね」

―――7月に公開された『水曜どうでしょう』のパロディ番組『水曜いかがでしょう』では、1960年代の白黒テレビのパロディにも挑戦されていますが、従来の作り方と違いはありましたか。

「1960年代の映像の最大の特徴は、まず4隅の角が丸いという点ですね。それから、当時のカメラは、フィルムなので、明かりを強く受けると周囲に影が出たり、テロップが出ると画面全体が暗くなったりといった特徴があるんです。こういった現象も、デジタルで緻密に再現しました」

―――『水曜いかがでしょう』には、「三東電器」という架空の企業による一社提供という設定で、冒頭にはどう考えても当時の映像としか思えない企業CMも登場します。こういった設定も西井監督のアイディアでしょうか。

「そうですね。僕は子どもの頃から架空の企業のロゴを作るのが好きで、今回の『三東電器』のロゴも、僕が作ったものです。

実在しない都市の地理を描いた『空想地図』の作家さんがいますが、そういったノリですね。ただ、アニメーションは僕一人では難しいので、アニメーターの方にお願いしました」

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