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2時間サスペンスという“偉大なるマンネリ”

西井氏の作業場には、シーンを記した付箋が張られていた(©武馬怜子)

西井氏の作業場には、シーンを記した付箋が張られていた。写真:武馬怜子

―――今回の『友近サスペンス劇場』では、どういった点にこだわりましたか。

「一番こだわったのは美術ですね。例えば今回の事件はストリップ劇場が舞台なんですが、表にかかっている看板の文言が分からない。

で、当時の文献にもあたってみたんですが、なかなか看板にフォーカスした記事がなかなかなくて。探し当てるのにかなり苦労しました」

―――リサーチにかなり力を入れられたんですね。

「そうですね。基本、撮影以外の時間は、ほとんどリサーチに費やして、関係がありそうな文献には手当たり次第に当たっていました」

―――ちなみに、2時間サスペンスは何本かご覧になりましたか。

「数本は見ました。ただ、2時間サスペンスって、ほとんどアーカイブとして公開もされてないんですよね。なので、正直漁ってもあまり見つけられなかったんです」

―――何百本と制作されていたはずなのに、ほとんど公開されていないというのは切ないですね。

「そうですね。当時はワイドショーやニュース番組と同じように、制作側も『一度きりのもの』として制作していたのかもしれないですね。

ただ、数本じっくり見ただけでも、制作側が色々なことを考えて作っていたことはわかりましたし、制作後は改めて偉大なフォーマットだと実感しました。なので、蔑ろにされているのはもったいないなと思っています」

―――作中には、低音で鳴る不穏なSEや地元の住民による名産品の紹介、そして、崖での犯人の自供など、「2時間ドラマあるある」がこれでもかと詰め込まれていますが、特に意識した点はありますか。

「一番意識した点は、物語のわかりやすさですね。2時間サスペンスでは、主婦が洗い物をしながらでも見れるように、劇中で何度も事件の『おさらい』を挟みます。この演出は、今回の企画でも踏襲しました。

あと、物語のテンポですね。これは、制作に携わっていた方にうかがったんですが、2時間サスペンスの鉄則は、『テンポが良すぎない』ことなんです。

最近は、『地面師たち』(Netflix、2024)をはじめ、面白いドラマがたくさんありますが、面白すぎると視聴者が見入ってしまい、『ながら見』ができなくなってしまう。現に、2時間サスペンスでも、テンポが良すぎてボツになった企画もあったようです。

なので、できるだけフラットなリズムで物語を進めつつも、飽きさせないようなリズムで編集を仕上げました」

―――「頭が空っぽの状態でも観られる」という点では、最近話題の縦型ショートドラマにもにているかもしれないですね。

「確かにそうかもしれませんね。その点は、映画館で没入して見る映画とは一線を画していると思います。なので、『友近サスペンス劇場』をスクリーンで流した時は、かなり緊張しましたね」

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