キャラクターの性格をさりげなく伝えるスタイリングの妙
作品を観て、すぐ目についたのが有村架純演じる、さえ子のスタイリングだ。色も小物づかいも着こなしも可愛らしい。加えて、さえ子は常にハイヒールを履いている。
女性出演者がヒールを履いて登場することが、日本の作品では少なくなった。一般女性もヒール靴を購入が、コロナ禍以降、減少傾向にある(2020年高島屋売れ筋調査より)。世間ではヒール靴を履くのは特別なシーンとなり、作品では登場人物の気性を表すときに使われることが増えた。今回、さえ子のハイヒールも後者の理由として、勝ち気な性格を表現するスタイリングに観えた。
こんなシーンがある。
雄介との回想中。突然の雨に降られたさえ子は、雄介に迎えにきてほしいと連絡。ピンヒールを履いて、雨の街中を走り、店の軒先で雨宿り。そこへやってきた雄介は雨具を持っておらず、怒るさえ子。
「ルブタンのピンヒールは、私が頑張って働いている証みたいなもんなの!」
濡れてしまった相棒のピンヒールへ、謝る一幕もあった。
もちろんヒールだけではない。ハイウエストボトムの着こなしや、バッグやアクセサリーの小物類もよく似合っている。この作品のために仕上げたのか、有村架純としてはあまり見かけない、明るいヘアカラーもさえ子のキャラクターを前面に押し出していた。
有村のスタイリングを担当したのは、杉本学子。これまでには『大豆田とわ子と三人の元夫』(関西テレビ、フジテレビ系・2021年)では松たか子。『着飾る恋には理由があって』(TBS 系・2021 年)では川口春奈のスタイリングを担当している。華美ではなく、あくまでも登場人物を中心に組まれるコーディネートの数々は、見逃して欲しくないディテールのひとつだ。