切ないラブストーリーに枯渇している人にはぜひ
『さよならのつづき』を観て、なぜ切なくなってしまうのか。その理由のひとつに登場人物が連鎖するように、少しずつストレスを背負っている。
全ての発端となるのは、雄介の交通事故による即死だ。もし彼が命を落とすことがなければ、幸せだったはずなのに。
さえ子は恋人を失い、冒頭から苦難を一挙に背負う。精神科医らによる調査(「ライフイベント法とストレス度測定」1993年)によると、人間が最も強いストレスを受けるのは「配偶者の死」であるという。気丈そうに振る舞っていても、さえ子の心はどこかくすんでいたかもしれない。そして恋人の心臓を持った異性が現れたけれど、和正には妻がいる。
和正もやっと健康を取り戻すことができたのに、移植前、自分にはなかった行動に戸惑う。本来、ドナーとその家族とは連絡を取ることができないのに、巡り合ってしまった二人。最愛の人を失ったさえ子を放っておくこともできないし、好きになり始めている自分もいる。でも妻を裏切ることもできない。運命はどこまで彼らを翻弄するのか。
その妻、ミキ(中村ゆり)も苦しい。死ぬかもしれなかった夫がやっと自分の元へ戻ってきてくれた。でも夫は違う人格を持っている。その様子を見守ることしかできず、認めることができない。
「(事実を)聞きたくない。カズが(移植相手のことを)知りたい気持ちは分かるけれど、知りたくない」
さえ子の存在に気づき、駅のホームで待ち構えていたミキが口論をするシーンも切なかった。
「不倫のほうがよっぽど良かった!」
この他にも実は、雄介とカフェを共同経営していた健吾(奥野瑛太)も、友人の死だけではない複雑な思いを抱えていた。
自分の状況と思い比べると、ひとつの不幸は滞留することはない。大事な人たちへと事実や、感情が連鎖していく。ただそれは周囲に自分を必要としてくれる存在がいるという、幸せの証でもある。
どうしたら良かったのか。ドラマの世界でありながら、ついたらればをつぶやいてしまう。そんなやりきれなさを『さよならのつづき』は描いている。
(文・小林久乃)
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