映画『ステキな金縛り』【ネタバレあり】あらすじ
裁判が終わり、がっくりと肩を落とすエミ。そんな彼女に、万亀夫が励ましの声をかける。しかしエミは「人を感動させるような芝居をしたことがあるのか」と酷いことを言ってしまい、万亀夫は家を出て行ってしまう。
落ち込んだエミは、六兵衛とともに公園へ。そして「自分がなぜ死後の世界を信じなくなったのか教えてあげる」と話す。
実は、エミは子どものころに父親を亡くしていた。しかし、最愛の父の声は、エミには届かなかったのだ。「お父上は必ずそなたを観ておられる」六兵衛はそう言って彼女を励ます。そしてエミは六兵衛に、被害者の矢部の捜索を依頼。六兵衛は、彼女の依頼を受け創作するが、鈴子はなかなか見つからない。
ある日エミが帰宅すると、部屋の隅に段田が立っていた。六兵衛を連れて帰りにやって来たのだ。エミは彼に、映画『スミス都へ行く』を推薦。作品の虜になった段田は、少しだけ猶予を与える。
空いた時間で六兵衛をとある場所に連れていく。六兵衛の慰霊碑建立予定地だ。木戸の尽力により、建立がようやく決まったのだ。これで成仏できると涙を流して喜ぶ六兵衛。そして彼は、「ご武運をお祈り申す」とだけ伝え、エミのもとを去っていく。
帰宅し、事件のことを考えたエミの脳裏に、とある疑惑がよぎる。それは「実は死んだのは風子の方ではないか」というものだった。浮気現場を目撃しもみ合っているうちに、妹の鈴子が姉の風子を殺害。鈴子が風子になりすましているというわけだ。
エミは、早速真相を確認しに姉夫婦の屋敷に直行。そのよそよそしい様子から、自分の直感が正しいとの確信に至る。
一方その頃、上司の速水は、糖尿病の悪化により危篤状態に陥っていた。エミはベッドに横たわる速水の横で、真実を説明し、段田への言付けを依頼。苦悶の表情を浮かべていた速水は、ほどなく息を引き取る。
悲しみに暮れるエミ。と、しばらくして、彼女の前に速水の幽霊が登場。段田を連れてきてくれる。エミは、段田のお気に入りの映画『素晴らしき人生』を見せることを条件に、風子に合わせてほしいと頼んでいたのだ。
そして裁判の日。傍聴席には、風子と、その夫の日野勉(山本耕史)の姿があった。証言台に立ったエミは、開始早々から遺体が別人の可能性がある、と驚天動地の主張を展開する。裏は取れているのか、と確認する小佐野。するとエミは、アルプス一万尺の鼻歌を口ずさみながら、風子にシナモンパウダーを振りかける。
と、粉だらけの風子の前に、いきなり鈴子の幽霊が表れる。パニックになる風子。そこから2人は、喧々諤々の姉妹喧嘩をはじめる。そして、鈴子は、自分は実は風子で、自分を殺したのは妹の鈴子だ、と証言する。
2人のやり取りを見ていた小佐野は、これ以上の証言はない、と裁判長に通達。結果的に、矢部五郎は無罪となり、前代未聞の裁判は幕を下ろした。はじめて裁判に勝ったエミ。小佐野は、そんな彼女を認め「裁判は勝ち負けではない」と言って帰っていく。
帰路の途中、エミは忘れ物に気づき、法廷に引き返す。1人法廷に佇むエミ。と、彼のもとに、エミの父と六兵衛が表れる。しかし、すっかり立ち直ったエミには、2人の姿が見えない。そこで父親は、思い出の「アルプス一万尺」を奏でる。父親の気配を感じたエミは、幸福感に包まれる。
数年後、エミは立派な弁護士になり、万亀夫と結婚。一児の母となる。六兵衛や速水、父親は、そんなエミをずっと側で見守り続けていた。
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