3名様のユルい日常が感動を呼ぶ理由
『ファミレスを愛する者たちよ』
Ⓒ2024「THE3名様Ω」Partners ⒸMakochin Ishihara
最後に、本作のクライマックスを形成するエピソードを解説しよう。
ある日、Big Boyに覆面をかぶり、片手をジャケットで隠し、その中に銃器があると思われる男が乱入してくる。男は、この店が大騒ぎになればなるほど、自分の目標は達成されると言い、SNSで自分のことを拡散しろという、謎めいた要求をする。
さらに、店員・岩元(桃月なしこ)を人質に取り、「ビッグ手ごねハンバーグと王様のステーキAセット」を注文。このメニューを食べ終わるまでに騒ぎが起きなければ店は営業終了だと告げる。
そんな中、3名様たちは、「この店が閉まったら、駅の向こうのファミレスに行かなきゃいけない!」という、ゆるい心配をしつつ、犯人を説得しようと、順番に交渉に挑む。
この最終章に関しては、ネタバレは控えておきたい。だが、これまでの「どうでもいい」エピソードのすべてが絶妙に絡み合い「ああ、あの時のあれがこうなんだ!」という驚きが待っているはずだ。
事件が終わった後のミッキーの「それ以上でもそれ以下でもない」締めの一言に、観客は同調しながら爆笑することは間違いないだろう。
さらに、覆面を取った犯人役には、意外にも大物俳優が起用されている。最後の最後まで、何を狙ったのかよくわからないが、それもまたこの作品の面白さである。おそらく、最初から伏線回収を考えていたわけではなく、最終章で「無理くり」に全編をまとめ上げたのだろう。しかし、それがまた『THE 3名様』らしいと言える。
結局、3名様の日常には「どうでもいい」ことが詰まっているが、それこそが我々の共感を呼ぶリアリティである。映画を観た後、無性にファミレスに行きたくなる人も多いのではないだろうか。
(文・ZAKKY)