「なんであんなに信長強いんだ問題」。刀一本・寝間着姿の信長VS甲冑の完全装備兵隊
クライマックスらしく盛大に盛り上げたいという製作サイドの気持ちは痛いほどわかる。しかし、刀一本だけ持った寝間着姿の信長が、甲冑を着込んだ完全武装の兵隊たちを、あんなにバサバサ斬れるがわけがないだろう。この期に及んで「史実に反している」などと難癖をつけるつもりは毛頭ないが、スペクタクルを盛り上げるために、リアリティーを犠牲にしているという印象は拭いがたい。
色々と放言をしてしまったが、最後に魅力を感じたポイントにも言及したい。信長の年老いていく様には、メイク技術も相まって、凄みを感じた。木村拓哉はテイクを重ねるたびに、少しずつ体重を落としていったのではないか。一方の綾瀬はるかに視線を向けると、年輪を重ねてもルックスに変化は表れない。彼女はずっと若々しく、美しく描写されているのだ。こうした対比描写は、当然賛否が分かれるだろうが、個人的にはアリだと感じた。
本作において信長は、亭主関白なスタンスを崩さず、終始、濃姫に対してマウントをとりたがる。しかし、本心では一目惚れをした濃姫にメロメロなのだ。綾瀬はるかのルックスに変化が見られないのは、「初めて会った頃の姿のままでいてほしい」という、信長の濃姫に対する(幼稚な?)願望を可視化した表現なのではないかと、筆者は受け取った。
そして、クライマックスに導入される、「もし信長が濃姫と共に異国の地に脱出をしていたとしたら…」という幻想のシーンがとても美しい。“これは現実なのではないか”と思わせる迫真性があり、なんとも見事なのだ。この演出によって、3時間弱にもわたって苦しめられてきた眠気と最後の最後でおさらばすることができた。
鑑賞中に脳裏をよぎったあらぬ妄想も含め、賛否が入り混じった、取り留めのない感想を綴ってきたが、本作が歴史映画の「レジェンド」として堂々たる出来栄えとなっているのか否かは、劇場に足を運び、どうか各自の目で確かめていただきたい。
(文・ZAKKY)