「家族との思い出を役に反映した」映画『美晴に傘を』日髙麻鈴、単独インタビュー。役者として成長するきっかけとなった出来事とは?
映画『美晴に傘を』が現在公開中。本作は、息子を失った父親、夫を亡くした妻、そして自閉症の娘が織りなす、失われた家族の再生の物語となっている。今回は、美晴役を務めた日髙麻鈴さんにインタビューを敢行。親族との思い出が、お芝居に反映されているという貴重なお話や、本作への思いをたっぷりとお聞きした。(取材・文:shuya)
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【著者プロフィール:shuya】
多数のジャンルを執筆するフリーライター。自身の俳優としての活動を生かし、映画やドラマ、俳優の素晴らしさを言葉で表現する。「言葉というかけがえのない芸術で人々の人生を変える」をモットーに、生きる力をあなたに届ける。
「美晴に寄り添い、支えられた」
本作で感じる
―――本作で日髙さんは、自閉症で聴覚過敏症を持つ美晴を演じられました。難しい役だと思いますが、本作のお話が来たときのことを教えてください。
「プレッシャーや不安はありましたが、美晴というキャラクターが私自身にどこか近い気がして、美晴に支えられるような気持ちで撮影に挑めました」
―――どんなところが似ていると思ったのでしょうか?
「私も、『本当はこういうことがしたい』とか、思っていることを伝えるのが得意ではなかったんです。美晴も本当は話したいことや、やりたいことがあるのに、それをうまく説明できない、そんな葛藤している女の子なんですよね。お芝居をするときは、美晴が感じていることなどを想像するように心がけていたのですが、反対に美晴も私に寄り添ってくれていたような気がします」
―――日髙さんは、美晴と一心同体で本作を作り上げられたんですね。思いをうまく伝えられない部分に共感されたとのことですが、この作品を通じて、その点に何か変化があったのではないでしょうか?
「本作は、自分の気持ちを言葉にしてちゃんと伝えたら、温かいことが待っているんだというメッセージがあります。もちろん、言葉に傷つくこともありますが、人は言葉に救われるということをすごく考えさせられました。それに、一歩踏み出す勇気にも繋がると思いますし、自分の気持ちを言葉にすることの大切さを再確認できました」
―――本作の中で1番印象に残っている描写はありますか?
「物語終盤で、善次(升毅)と透子(田中美里)と美晴の言葉が重なっていっていく描写があるんですが、そのシーンは、脚本を読んだ時から涙が止まらなくなったんです。私の言ってほしい言葉や伝えたい言葉が全部その中に詰まっていて、心にじんときました」