平井亜門「岡田詩歌さんが作る男性キャラクターは生々しい」

平井亜⾨
平井亜⾨ 写真:武馬怜子

―――仕草がクセの強い男性たちと出会ったり別れたりしていく本作ですが、どのエピソードが一番強烈だなと感じましたか?

祷「シーンのボリュームもありますが、やっぱり中島(歩)さん演じる金子は強烈だなって思いましたね。落差があるというか…例えば、佐伯との付き合いはお互いに好きなことややりたいことをわかったうえで、自然体な状態で出会っていますよね。一方で金子とは、最初が王子様みたいに素敵で優しくてジェントルな、年上の余裕がある人という、印象もよくて期待値も高い状態で出会っています。そこからどんどん裏切られていく。別れのシーンは、もう山頂まで来ちゃったから引き返せないし、別れ話をしようにもお互い途方に暮れてしまう。この一連のやりとりは、すごく強烈だなって思いました」

平井「僕が本当に気になるのは金子というか、中島歩という人間なんですけれども、あれはもう殿堂入りということで1回おいておいて…(笑)。塾講師の栗原(二見悠)さんですね。岡田(詩歌)さんがつくる男性のキャラクターってマジで生々しくて。自分が小中学生のときを思い出しても、噂レベルで塾の先生と生徒がええ感じなんやで、みたいなことを聞いて、幼いながらにそんなん嘘やろって思っていたんですけど、大人になるにつれてどんどん人間の醜悪さが見えてくると、こういうことって割とあったんちゃうんかなって思えてきたりして。もちろん、岡田さんが直接そういう経験があったわけじゃないと思うんですけれども、もしかしたら身近にあったことなんちゃうんかなと思ったら怖いですね」

―――いま、「生々しい」という言葉が出てきましたが、個人的には仕草と佐伯の別れのシーンも生々しく感じました。佐伯は写真などを大事に壁から剥がしている一方で、仕草は玄関を出た時点からもう創作のことを考えていたんじゃないかな、と予感させられて。

平井「痛いっすよね、あのシーン。佐伯は本当に仕草を大事に思っていたかわからんけど、恋愛を犠牲にしてまで芸術に没頭する俺って悦に入ってる。やっぱり、佐伯はいつも自分のなかでは主人公な人だと思うので、すごく痛いな、と思いますね」

祷「人と人がカップルになると、役割が自然と生まれるというか。山田仕草であるということは変わらないはずなのに、佐伯と付き合ってるときだったら、佐伯という人物の彼女の山田仕草という役割を演じているというか、新しい何かが立ち現れてくる感じってありますよね。だから恋愛が終わるときって解き放たれるというか、もう1回純粋な山田仕草に戻れる爽快感というか、そういう清々しさみたいなものがあったのかも。それに気付いたときに、意外と大丈夫じゃんって思えたのかなとか、そういう気持ちはわかるような気がします」

平井「知らず知らずのうちに洗脳状態みたいになることあるよね、きっと。ずっと同じ人と関わり続けることによって、その人の価値観に影響されるとか」

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