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「これで絶対世の中に出ていくんだ」
自分自身と作品がマッチした“モラトリアムからの脱却”

手前から堀内友貴監督、主演の花純あやの、五十嵐諒 写真:武馬怜子
手前から堀内友貴監督主演の花純あやの五十嵐諒 写真武馬怜子

―――初稿ではタイトルが違ったそうですが、どんな題名でしたか? また最終的に『明ける夜に』というタイトルにした決め手を教えてください。

堀内「最初は『またね。お祭りの後に』というタイトルでした。その後に付けたものが『夏が明ける夜に』というもので、その題名のまま撮影もしていたのですが、仮編集をしてスタッフたちと集まった時に最終的にどうするかを話し合いました。

色んなことが“明ける”話だし、夏に限定するのではなく、“明ける”というニュアンスがより広がればと思い、このタイトルになりました」

―――最初は全く違うタイトルだったんですね。冒頭から想像をことごとく裏切られるようなショットが散りばめられており、斬新でとても面白かったです。カット割りは脚本を書く段階で決まっているのでしょうか?

堀内「書く時はそこまで考えてはないんですけど、想像して書くようにはしましたね。例えば、包丁がここで出てきたら面白いかなとか。

カット割りについては撮影の中村君と話し合って決めたんですけど、僕も中村君もカットを割るのがあまり好きじゃなくて、脚本の段階で何となく2人で話し合って、あとは現場で演技を見て決めるという感じだったんですけど、現場では『意外とマスター※だけでイケるね』と想定よりもカットを割らずにワンシーン・ワンカットで撮影しました」

※マスターショット。一つのシーンで基本となる位置から撮影されたショット

―――無駄なカットが無かったので、役者陣のお芝居をじっくり集中して観ることができました。お二人に役についてお聞きしたいのですが、五十嵐さんが演じた山ノ辺は優しく相手に順応できるようなキャラクターだと感じました。花純さん演じたキミは気さくで誰とでも仲良くでき、面倒見の良い姉御的なキャラクターだと思いました。役作りについてはいかがでしたか?

(五十嵐さん花純さんを見る…。)

花純「先言ってくださいよ。逃げたよね、今」

五十嵐「役作りか…。僕はタイミング的に役者としての“覚悟”について考えている時期でした。山ノ辺というキャラクターは物語を体現する存在だと思っていて。

彼は、社会人への一歩を踏み出せないでいるのですが、8月31日の出会いが大人になるきっかけとなる。今回は、あらゆる登場人物たちに“反響”するような演技をしたいと思いました。

僕は役者としてイケメンでもなければ、容姿的に大きな特徴があるわけではないので、共演相手をどれだけ反響させられるかというところが役者としての生きる道だと思っていて、その覚悟を示したいと思っていたんですよね。

なので、フラットな気持ちで現場に入ることと、花純さん演じるキミの魅力を引き出すことをテーマとしてやっていました。とはいえ、花純さんが素晴らしいお芝居をしてくれたので、現場では特にやることもなく、素直に芝居を受け取るだけで良かったんですけどね」

花純「私は初めて脚本を読んだ時、キミのセリフや行動に、監督と初めて会った時の私自身の言動が反映されていると思いました。当て書きして下さっていると思ったんですけど、言葉のチョイスや語り口に私には無い温もりや深みを感じました。それは監督ご自身の感覚だと思うので、撮影当時は無意識のうちに、監督のことを目で追って観察していたような気がします(笑)」

―――五十嵐さんは役との共通点はありましたか?

五十嵐「僕はかつて事務所に所属しており、現在はフリーランスで活動しているのですが、フリーになってから初めての仕事が本作だったんです。

スタッフも『この作品で映像業界に見つけてもらうんだ』という気持ちで撮影に臨むというのを聞いていたので、僕自身も『これで絶対世の中に出ていくんだ』っていう思いもありましたし、その感覚は、山ノ辺が抱えているモラトリアムからの脱却という問題とマッチしていたと思います。

『やってやるんだ』という強い意志を持つ一方『今自分がやっていることが正しいのか分からないけど、手探りでやるしかないという』もどかしさもあって。その辺も役柄とマッチしていた感覚があります」

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